エネルギーの有効利用の観点からみると,熱輸送媒体(水,各種ブライン等)を用いた熱エネルギー輸送システムは,「輸送のためのエネルギーが余分に必要」という根本的な問題を抱えている.このため,熱輸送媒体への流動抵抗低減剤の添加によって得ることができる流動抵抗低減効果を用いた輸送エネルギーの削減技術が検討されているが,流動抵抗低減と同時に配管内壁との熱伝達が減少してしまうという欠点を有している. 本研究は,熱交換器の伝熱面にμ・nmサイズの粗面加工を施すことによって,流動抵抗低減効果時の熱交換器の熱伝達特性を向上させるとともに,粗面化による流動抵抗の増加をできるだけ抑制するという2つを目的として研究を行った.しかしながら,平成29年度には研究代表者の所属機関の異動があり,これまでに作製した実験装置に変わる新たな実験装置の作成を,新たな所属先において行った.その結果,実験装置は完成することができた.しかしながら,当初の研究予定であった新たな形状値での粗面試験部の実験については,十分な精度での測定まで行うことは困難であった.そのため,平成29年度の研究としては,前年までに行った研究成果を整理してまとめることで,粗面試験部において,粗面形状が流動と熱伝達特性,さらに本研究費で購入した2次元PIVシステムを用いて粗面試験部における流動状態を明らかにするとともに,その成果発表を日本熱物性学会主催の第38回日本熱物性シンポジウムにて行った.
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