研究実績の概要 |
熱機関における着火・点火は,ナノ秒で生成される火花放電などの非平衡プラズマによりプラズマ電子温度が上昇し,周囲への熱移動によりガス温度が上昇し,化学反応が開始する.このような火花放電におけるプラズマから周囲ガスへの熱移動現象を時系列計測し,モデル化することを目的としている.本研究では,圧縮膨張機関を使用し,ピストン圧縮行程後半におけるガス混合気に火花放電を行い,火花放電ならびに初期火炎核形成過程の可視化を行った.スプレイガイド式筒内直噴機関において,点火プラグに衝突する噴霧ならびに噴霧に影響を受けて引き伸ばされる火花放電を1Mfpsの超高速度カメラと長距離顕微鏡により可視化できた.予混合希薄条件での火花放電挙動は移動方向に毎サイクル違いがみられ,初期火炎核形成位置も変化する.光ファイバを組み込んだ点火プラグを用い,圧縮膨張機関において,プラズマ温度を5kHzでの時系列計測を行った.希薄条件において,プラズマ振動温度が7,000K程度であった.OH*より求めたガス回転温度は,点火時期では6,500K程度であったものが,初期火炎核形成時では2,000K程度であり,高いプラズマ温度から周囲予混合気への熱移動現象を把握できた.また,3次元エンジンCFDによりシリンダ内流動を数値解析により求めた.火花放電をプラズマ点が線状に連なった集合体としてモデル化した.プラズマ点から流体メッシュ側にエネルギーを与えることで素反応モデルにより着火現象を表現した.点火プラグ近傍の乱流構造を予測するために,LES (Large Eddy Simulation)を用いた.平均場を表現しているRANSに比べ,点火プラグ後流の火花放電挙動は,可視化結果と良い一致が見られた.LESにより火花放電の長さを定量的に表現でき,初期火炎核形成位置を精度良く示すことが可能になった.
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