研究課題/領域番号 |
15K05835
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森上 修 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70363124)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自着火 / 燃料液滴 / 干渉作用 |
研究実績の概要 |
燃料噴霧の自着火による燃焼開始過程のメカニズムの解明は,熱機関の熱効率向上,逆火の防止,排気中の汚染物質の低減にとって重要である.最も簡単な素過程として単一の燃料液滴を扱う研究が多く行われてきたが,本研究は燃料液滴間の干渉作用について解明し,単一液滴の知見を噴霧に拡張するための研究である.炭化水素系燃料の自着火においては,燃料の部分的な酸化である冷炎が発生してある程度の遅れの後に熱炎が発生するという二段点火が生じ,このために点火遅れは複雑な雰囲気温度依存性を持つ.よって,冷炎から熱炎という過程に着目した解析が重要であるが,冷炎は発光を伴わないため,その空間的挙動の観測のために干渉計が有効である.本研究では,軸対称な複数液滴の自着火を干渉計で観測し,数値計算を利用して,現象の解釈,理論化を行う.前年の2015年度は,現有であった実験装置を改修し,熱発生の定性的な二次元観測を可能にするマイケルソン干渉計を二基二方向に搭載し,熱発生個所の三次元的な観測を可能とした.しかしながら,液滴懸垂線の支持棒が横方向からの観測に干渉するという不具合が露見していた.2016年度は装置のさらなる改修でこの不具合に対応した.改修された実験装置を用い,北海道宇宙科学技術創生センターの50m落下塔にて微小重力実験を遂行し,二液滴の自着火を三次元的に観測した.これにより,冷炎,熱炎の発生場所が二液滴を含み鉛直な面から大きく離れた場所にあるのではないかという懸念が払拭された.なお,懸垂線の支持棒の改修により,電気炉内に若干の非対称性が生じてしまい,そのさらなる改善が望まれる.2017年度は収集されたデータに数値計算を利用した解析を適用し,理論構築を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年度には北海道宇宙科学技術創生センターの50m落下塔における微小重力実験において,落下実験装置と地上の実験者との無線LANによる通信に難があり円滑な実験遂行の妨げとなった.2016年度は,この問題を,落下実験装置,実験者ともにLTEルータでインターネット接続させる方式を試み抜本的に解決した.宇宙航空研究開発機構とドイツ航空宇宙センターの国際共同研究ロケット実験については,ドイツ側とのさらなる協議により,2019年の実施を目指すこととなり当初の予定より遅れる見込みとなった.
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に確認さえた,懸垂線の支持棒による電気炉内の若干の非対称性の改善を行う.また,当初の計画通り,自着火遅れと自着火の位置に関する理論の構築,数値計算の実施,微小重力実験の遂行を行う.実験により液滴間隔の影響を調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
約8.5万円の未使用額が生じた.燃料購入に充てることができたが,次年度に,より新鮮な燃料を購入することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
燃料費に充てる.
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