3次元積層システムに適した液冷システムの最適化手法を確立するためには,熱流体の数値シミュレーション技術の活用が不可欠である。微細な複雑流路での熱流動解析を実施するためには,形状の詳細な再現および微細構造部を解像可能な高分解能メッシュを使用することが必要である。生物模倣型流路への適用を視野に入れ,任意形状に適合した格子を容易に作成可能な方式を採用し,メッシュ生成手法およびメッシュ性状が計算効率と精度に与える影響を調査した。ポリヘドラルメッシュの採用により効率的かつ高精度の結果を得られることを明らかにし,計算モデル作成の指針を得た。 数値シミュレーションの精度を検証するための実験システムを改良し,微小な圧力損失変化の測定が可能となった。薄型液冷ヒートシンクに供給する流量を変化させ,圧力損失への影響を明らかとした。加熱条件(発熱量および発熱面)による温度場への影響も明らかとなった。測定の不確かさについて検討し,検証用データとしての有効性を高めることに成功した。 実験結果とシミュレーション結果との比較から,その妥当性を検証した。流路内部におけるはく離流や2次流れによる冷却効率の変化が明らかとなり,複雑な分岐構造を有する流路網の構築にあたっては流れの予測性能に注意を払う必要があることを示した。定性的な一致を得ることが可能となり,今後の最適設計に向けた基盤技術が確立された。 シミュレーションに活用したオープンソースソフトウェアOpenFOAMの収束性には課題が残るが,収束性ならびに計算効率を向上させるための指針を得た。
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