研究課題/領域番号 |
15K05842
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
森本 久雄 東洋大学, 理工学部, 教授 (00385957)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノマイクロ熱工学 / 磁性粒子 / 酵素 / クラスター / 交流磁場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,表面に酵素を固定化した磁性粒子(磁性粒子/酵素複合体)の自己組織化クラスター構造とその高周波交流磁場中における発熱,さらには粒子表面の酵素活性との関係を明らかにすることである.平成 28 年度は,α-アミラーゼを表面に固定化した磁性粒子を対象とし,前年度作製した実験システムを用いて直流・交流複合磁場中における磁性粒子/ α-アミラーゼ複合体のクラスター形成,ならびにクラスター形成が粒子の発熱および酵素活性におよぼす影響について解析した.まず,テストチューブ内の磁性粒子/α-アミラーゼ複合体分散溶液に直流磁場を印加し,その際の酵素活性変化を解析した.テストチューブに対して直流磁場の方向を変化させて解析を行ったが,いずれの方向に磁場を印加した場合でも無磁場における酵素活性に比べて変化は認められなかった.一方,高周波交流磁場を印加すると粒子の発熱に起因した酵素活性の上昇がみられた.さらに直流・交流複合磁場中の酵素活性を調べると,交流磁場のみを印加した場合に比べてさらに活性が上昇することがわかった.この活性上昇量は,直流・交流磁場の成す角に依存して変化し,両者の方向が一致する際に酵素活性は最大値を示した.さらに直流磁場強度を固定して交流磁場の振幅を増加すると,これに応じて活性上昇量も増加した.本実験結果についてより詳細な検討を行うために,直流・交流複合磁場中における磁性粒子のクラスター構造を光学顕微鏡により観察した.複合磁場中の磁性粒子を観察しようとすると,交流磁場によって顕微鏡ステージやレンズも加熱されてしまう.そこで複合磁場中の磁性粒子分散溶液にアガロースを添加して固化したものを観察し,磁性粒子の鎖状クラスター形成の確認に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に作製した実験システムを用い,磁性粒子/α-アミラーゼ複合体の直流・交流複合磁場中における酵素活性の測定を行った.また複合磁場中の磁性粒子溶液をアガロースで固化することにより粒子のクラスター構造の観察に成功した.粒子のクラスター形成と酵素活性の関係解明については今後の課題であるが,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
磁性粒子/α-アミラーゼ複合体を対象に,直流・交流複合磁場中における粒子のクラスター形成と粒子の発熱および酵素活性の関係を詳細に解析する.粒子濃度や直流磁場強度と交流磁場の振幅との比などを変化させて実験を行い,粒子のクラスター構造,酵素活性および粒子発熱量を解析する.また回転磁場と高周波交流磁場を同時に印加した際の酵素活性測定ならびにクラスター構造の観察も行う.既に平成 28 年度に実施した実験において,直流・交流複合磁場の印加により磁性粒子表面の α-アミラーゼの活性化に成功しているが,DNA リガーゼやインベルターゼなど他の酵素への応用化についても検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成 28 年度は,ほぼ計画通りに当該年度分助成金(直接経費)の 99% 以上を使用した.残額は少額であったため,平成 29 年度分として請求した助成金と合わせて有効使用することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額であり,基本的に平成 29 年度使用計画に変更は無い.平成 29 年度分として請求した助成金と合わせて薬品および実験で使用する物品等の購入に使用する予定である.
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