• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

アルミファブリックの創製と伝熱促進

研究課題

研究課題/領域番号 15K05844
研究機関同志社大学

研究代表者

稲岡 恭二  同志社大学, 理工学部, 教授 (60243052)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード熱伝達 / 熱交換 / 伝熱促進 / 多孔質体 / アルミ繊維 / 異方性 / 配向
研究実績の概要

本年度の研究成果は以下の3点である。
第1に、線径0.16ミリのアルミ素線から作成したアルミファブリックを用い、熱交換流路に設置する方法を検討した。一般的なコルゲートフィンを念頭に、ファブリックの縦糸が伝熱面に接し、流路高さ10ミリの中に縦糸群がコルゲート状になるように成型した。コルゲート成形法を開発し、ピッチを3通りに変え空隙率を変化させ、熱交換実験の準備を整えた。また、ファブリックと伝熱面の接着方法を検討した。
第2に、熱交換実験装置において、アルミファブリックフィンの熱交換実験を実施した。実験では、コルゲートピッチ、向き、流速に対する伝熱特性を調べた。アルミ製平板コルゲートフィンのデータを採り比較に供した。アルミファブリックフィンは、平板コルゲートフィンの約4倍の高い伝熱促進効果を示す結果を得た。熱伝達率はフィンピッチが小さいほど増加し、伝熱促進比は最大で非設置時の15倍程度に達することが明らかになった。また、伝熱促進比はコルゲーションに対し垂直方向から空気を流入させる方が平行方向から流入させる場合より高く、圧力損失も増加する結果となった。今後は、さらにフィンピッチを変えて実験を行い、再現性を確保すると同時に、ポンプ動力に対する熱伝達の総合性能を調査し、最適な形状について検討する。
第3に、銅セルメット多孔質体を使ってバイパス流の影響を調査した。バイパスが相対的に小さい場合には、圧損も含めた伝熱性能は高いものの、バイパスを大きくすると伝熱性能が極端に低下し、非設置の場合に近づくことが定量的に明示できた。これは熱交換に寄与しない流体割合が増えることが主因で、熱伝達促進を得るには流体の多くが多孔質体内部を通過する必要があることを示唆する。通過厚さを幾何形状的に制御し、圧損削減の可能性を探ることが重要で、流体の通過厚さなどを調査し、さらに特性を明らかにしていく考えである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年の報告で、単純な熱交換機構のモデル化検討に代わり、流れのバイパス効果などの新しい形状変更効果の可能性の有無を検討するよう修正したが、その後は順調に進展しており、状況は以下の3点である。
第1に、アルミファブリックの製作方法は調査を終え、製作を行っている。アルミファブリックから流路に実際に設置するサンプルを幾つか製作し、熱交換実験を行っている。流路への設置には、全体的にはコルゲート形状を選択し、フィンピッチを変更することで空隙率を変更することとした。また、伝熱面への接着も検討した。
第2に、製作したアルミファブリックを使用した熱交換実験は順調に実施しており、計画通りである。昨年の装置健全性に対する予備実験に引き続き、まずアルミ平板を使った平板コルゲートフィンの熱伝達率を測定した。続いてアルミファブリックフィンを設置した場合の熱伝達率を測定し、その優位性などを調べた。フィンピッチを3通りに変化させて実験を実施し、伝熱特性の概要を調査した。その結果、高い熱伝達促進比のデータを得ている。熱交換量が多いと温度差が小さくなり相対的に実験精度が落ちるため、それを克服するため温度制御装置を導入するなどして工夫し対応した。なお、データの信頼性を充分取ることが重要と考えており、再現実験を計画している。またフィンピッチをもう少し細かく変えてデータの補充を行い、熱伝達と圧力損失の両者を加味した最適化を探る計画である。
第3に、研究動向調査の結果を受け、軌道修正した流れのバイパス効果についても、バイパス流路が最も単純な場合について実験を実施済みで、知見を得ており、計画通りである。得られた知見をもとに、流体の多孔質体通過厚さを幾何形状的に制御し、熱伝達が向上する圧損削減方法を探ることが重要であり、通過厚さをもとに多孔質体の全体形状を変更していくなど、さらに影響を明らかにしていく考えである。

今後の研究の推進方策

今後の推進方策は、以下の3点である。
第1に、製作したアルミファブリックフィンを熱交換流路に設置する場合の熱交換実験を行う。特に、繰り返し実験を行って昨年度のデータの再現性を取ることと、フィンピッチについてもう少し細かく変更して精度のよいデータを揃えて拡充していく。圧力損失と熱伝達特性から得られる様々な分析を行い、両者を加味した特性を定式化(モデル化)する方向で吟味していく計画である。アルミファブリックフィン、銅セルメットフィンについて、どのように熱が伝わっていく様子を概略理解するために、赤外線放射温度計による可視化観察も予定している。
第2に、熱伝達促進と圧力損失低減の上で最適な多孔質体の全体形状に対する実験を行う。昨年度に軌道修正した後、銅多孔質体セルメットを使って単純なバイパス流の効果を調べた。熱伝達促進と同時に圧力損失を得るには、多くの流体が多孔質体内部を流れる必要があり、このことは流れの通過距離を考慮に入れた全体形状の最適化を図る必要があることを示唆している。すなわち、多孔質体内部の流れを変えていく踏み込んだ視点での調査が必要である。この点については、銅セルメットブロック体の内部について、ある一定のスパン方向幅にわたって複数部分を取り除き、かつこの除去によって流れ方向への通過距離を変更する手法を本年度に試行してみて、伝熱促進効果と圧力損失低減効果について検討する計画である。具体的には、通過距離を3通りに変化させて形状変更効果の優位性を確認し、その上で、アルミファブリックについて適応可能性について検討していく。
第3に、アルミファブリックの総合性能を明示し、最適な利用方法について提言をまとめ、ならびに今後の実用化に向けての課題・応用展開について検討する。なお、銅セルメットで得た形状の知見は関連企業とも連携し、課題を詰め実用を具体化させる考えである。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた主な理由は,国際会議について当初の海外を変更し,国内に参加したため,渡航費滞在費などの費用がその分少なくなったことによる.

次年度使用額の使用計画

実験データの取得に手間と時間を要するものと予想され,その分,実験補助の謝金を増やしたいと考えており,上記の金額を有効に充当し,成果の充実を図る計画である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 銅多孔質体を設置した流路の伝熱特性(流路すき間の影響)2017

    • 著者名/発表者名
      Roger A. LARRABEE,山本麻微,伴 拓実,稲岡恭二,千田 衞
    • 雑誌名

      同志社大学ハリス理化学研究報告

      巻: Vol. 57, No. 4 ページ: 76-83

    • DOI

      027962197

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] アルミニウム繊維織物を設置した流路の熱伝達特性2017

    • 著者名/発表者名
      伴 拓実,Roger A LARRABEE,家氏大輔,稲岡恭二,千田 衞
    • 学会等名
      日本機械学会関西支部第92期定時総会講演会
    • 発表場所
      大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)
    • 年月日
      2017-03-13 – 2017-03-14
  • [学会発表] 銅多孔質体による熱伝達促進2016

    • 著者名/発表者名
      Roger A. LARRABEE, 山本麻微,伴 拓実,稲岡恭二,千田 衞
    • 学会等名
      同志社大学エネルギー変換研究センター2015年度研究成果報告会
    • 発表場所
      リーガロイヤルホテル京都(京都府京都市)
    • 年月日
      2016-12-02 – 2016-12-02
  • [学会発表] Effects of Air Bypass on Heat Transfer Performance in a Channel Flow with Metallic Porous Media2016

    • 著者名/発表者名
      Roger A. Larrabee, Mami Yamamoto, Kyoji Inaoka, Mamoru Senda
    • 学会等名
      The fourth International Forum on Heat Transfer and Energy Conservation, IFHT2016
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2016-11-02 – 2016-11-04
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi