最終年度の研究成果は以下の2点である. 第1に,アルミ繊維のコルゲート成形法について改善を検討した.昨年度開発したファブリックフィンは,アルミ素線の経糸108本/インチに対する緯糸を機織り可能限界の6本/インチとしたアルミ織物から製作したものであり,コルゲートの成形には熟練と高度な技術を要し,製作物の確保に時間と労力を必要とした.本研究では,アルミファブリックフィンの創製について一定の成果が得られたが,実用性を踏まえ,緯糸割合を増やした高い成形性をもつファブリックフィンを製作した.簡易実験を実施した結果,緯糸割合の増加とともに,熱伝達率が減少する傾向を得ている. 第2に,昨年度のバイパス流の実験結果を踏まえ,銅セルメット多孔質体の通過厚さを変更し,圧力損失を低減する検討を行った.いずれの空気も多孔質体を必ず通過し,かつ圧力損失が低下するように多孔質体に流れ方向の溝を設定し,全体形状を流れ方向に対しS字型とする波型多孔質体を製作し,伝熱実験を行った.その結果,S字型波型多孔質体の圧力損失は,多孔質体ブロック体の半分以下に抑えられること,熱伝達促進は概ね同等であって,総合性能はより良好になる結果を得た.同じ送風動力であれば,ブロック体に対し約1.2倍の伝熱促進を達成できることも分かった.ただし,溝幅や通過距離に応じて熱伝達性能が変化することも分かり,この点は新たな検討課題と考えている. 本研究では,アルミ織物による異方性制御,S字型多孔質体の検討によって,アルミ織物フィンの異方性を制御しながら,最大で約16倍の伝熱促進を得ることができ,他の繊維層多孔質体に対しても,より小さな送風動力の領域のもと,良好な伝熱特性を発揮する多孔質体要素を新たに見出し,その特性を明らかにすることができた.
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