本研究は高温に過熱された伝熱面を急速に冷却する際に発生する様々な熱流動ダイナミクスを解明することを目的としたものである.本最終年度においては原子炉炉心においては多数のサブチャンネルから構成されていることを鑑み,最も基本的な管配置である並列管の場合について,SUS304管を用いて,さまざまな熱容量,すなわち管肉厚の場合について強制ならびに重力注水を行って,冷却挙動を解明した.理論的には管の肉厚が大きいこと,管内の沸騰流の通過時間が管の熱容量に関する時定数に比べてかなり短いことから,冷却特性すなわち温度変化挙動は集中定数系近似が可能であり,膜沸騰,遷移沸騰,核沸騰と沸騰様式が変化する過程を一括して表現する近似モデルを定式化した.また実験的には並列管間における流動の動的干渉によって脈動が発生すること,それによって並列管間でおおよそ逆位相の変動が温度挙動に観測された.またこのような冷却問題において最も重要な冷却時間についても管の熱容量にかかわる時定数を用いることによってうまく相関することが可能であることも判明した.このような冷却挙動と管内流動の相互関係を理解するために石英ガラスを用いた可視化実験を行い,冷却の進行と共に液滴流,逆環状流,逆スラグ流などを経て,冷却後の気泡流へと変化することを明らかにした.このような流動のダイナミクスをも考慮した数理モデルはほとんど開発されておらず,今後も継続的に検討を続ける予定である.
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