研究課題/領域番号 |
15K05856
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中野 寛 東京工業大学, 工学院, 准教授 (70433068)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自励振動 / びびり振動 / エンドミル加工 / 被削材強制加振 |
研究実績の概要 |
タービンブレード等,剛性の低い被削材は,切削加工中に再生びびり振動を生じやすく,加工効率が低いのが問題である.再生びびり振動の抑制対策として,動吸振器や不等ピッチ工具の利用などがあるが,軽量な被削材では加工の進展に伴いモーダルパラメータが大きく変動するため,抑制効果を得ることが難しい場合がある.そこで低剛性被削材に生じる再生びびり振動に対して,加工効率を下げず効果的に振動を抑制する手法として.本研究では,被削材に対し2軸方向への加振を行い,工具の回転周期と同調して切れ刃の接線方向に加振することで時間遅れを意図的に変動させて,再生びびり振動を抑制する新たな制振方法を提案する. 平成29年度は,昨年度求めた,被削材強制加振による再生びびり振動抑制効果が最大となる最適な加振振動数の関係式について,エンドミルの刃数が異なる場合や切削方法の違い(上向き削りと下向き削り)を考慮して解析を行った. エンドミル切れ刃枚数の違いに対する最適加振振動数については,切れ刃枚数Nの場合における,被削材強制加振時の時間遅れ変動量の関係式を求め,刃数が2,3,4枚における最適な加振振動数をそれぞれ考察した.その結果,刃数2枚の場合と3枚の場合で切れ刃通過周波数に対する最適な加振振動数が異なること,刃数4枚の場合,時間遅れ量は加振振幅のみに依存し,最適な加振振動数は存在しないことを明らかにした.上向き削りと下向き削りの場合で,再生びびり振動抑制効果をSemi-discretization method を用いた発生限界線図の比較をした結果,下向き削りの方が同一加振条件で,より発生限界が向上することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はエンドミル切れ刃の違いや上向き削りと下向き削りの切削方法の違いによる,最適な加振振動数条件の導出を行ない,加工条件による,加振条件の違いを明らかにした.当初予定していた,被削材強制加振冶具の改良して2方向の加振変位の差が生じたことによる,解析結果と実験結果の違いの検証や被削材加振による加工面精度や工具摩耗の影響の調査は,実験中のピエゾアクチュエータの故障,故障の原因究明と設計変更,代替のピエゾアクチュエータの取得に時間を要してしまったため平成29年度中に実施することができなかった.故障の原因を解明し,設計変更案も固まっているため,平成30年度は,未実施の実験項目や本研究成果の総括を行う.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,当初予定していた,被削材強制加振冶具のピエゾアクチュエータの個数を増やして,加振能力を改善し,冶具の共振周波数より低い加振振動数で加振して,2方向で同振幅加振を実現する装置を製作する.昨年度までに数値解析で抑制効果を確認した加振振幅で,切削加工中の加振実験を行い,再生びびり振動抑制効果を確認し,昨年度までの数値解析結果と比較し,解析結果と同等のびびり振動抑制効果が得られるか検証する.また,被削材加振による被削材加工面の加工精度や工具摩耗の影響を調査し,加工面精度や工具摩耗への影響を最小限に抑えて、びびり振動発生限界となる軸方向切込み深さを最大にする最適な加振条件を明らかにする.最後に,本研究課題の成果の総括を行う.
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