タービン翼や薄肉部品など低剛性被削材を切削加工する際.再生びびり振動が発生し,加工効率や加工精度の低下が問題となる.びびり振動抑制対策として,動吸振器などの制振装置の付加が挙げられるが,加工経路に干渉しないように制振装置を取り付けなければならないこと,加工が進むにつれて被削材の剛性が低下するため,発生するびびり振動数に応じて動吸振器の固有振動数を調整する必要がある.本研究は,被削材に制振装置を取り付けるのではなく,切削中に加振ステージを取り付けた被削材を強制加振することで,びびり振動を抑制する新たな制振法を提案することを目的としている.これを実現するために,びびり振動が時間遅れによる自励振動であることに着目し,工具切れ刃の接線方向に工具回転に同期させて加振し、時間遅れを変動させることで,強制振動による加工面精度の低下を招くことなく,びびり振動を抑制することを考えた. 平成30年度は,被削材を固定する加振ステージを設計変更し,ピエゾアクチュエータの個数の増加および加振ステージの剛性を変更することで,加振変位を改善した.さらに,びびり振動モードを考慮した加振波形を導出し,工具回転に同期させて,切れ刃の接線方向に加振可能であることを確認した.製作した加振ステージを用いて,平成29年度までに数値解析で抑制効果を確認した加振振幅や加振振動数の条件で,切削加工中の加振実験を行い,びびり振動抑制効果を確認した.また,びびり振動発生時に被削材を工具切れ刃の接線方向に加振した際の被削材の振動変位を測定した結果,x方向とy方向の振動変位共に低減し,強制振動の影響が現れないことを確認した.この結果は,従来の加振ステージを用いたびびり振動抑制対策とは異なり,強制加振による加工面精度への影響を最小限に抑えて、びびり振動発生限界となる軸方向切込み深さを向上させる有効な対策となると考える.
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