研究実績の概要 |
本研究の目的は非線形システムの最適制御多点境界値問題の解法を開発し、得られた最適解が時々刻々変化する外部環境に適合するように、予測制御の手法と融合させた最適解の実時間解法をあわせて開発することである。具体的な課題としては、課題(a)線形システムに対する最適制御多点境界値問題の実時間解法の開発、課題(b)線形システムに対する最適制御多点境界値問題と予測制御との融合、課題(c)非線形ロボットに対する最適制御多点境界値問題の実時間解法の開発と予測制御との融合、課題(d)実ロボット制御への適用と評価、を設定している。平成27年度は主に課題(a),(b)を、平成28年度は主に課題(c),(d)を実施し、その成果に基づき、平成29年度は主に課題(c),(d)をさらに深く追求した。具体的に実施した内容は以下の通りである。 課題(c)に関しては、非線形システムに対する最適制御多点境界値問題の解のシステム論的な性質として、解の存在性・唯一性、与えられた多点境界値と最適制御評価関数との関係を考察した。また、課題(d)に関しては、センサの改善、評価関数と多点境界値の設定の改善を通して、双腕多指ハンドロボットの高機能作業、卓球ロボットのサーブ・ラリーの実現でのロバストな制御性能の達成を試みた。 これらの実施から、当初予定していた研究目的はおおむね達成されたが、新たに劣駆動系の課題が顕著化した。すなわち、ロボット自体の自由度は多くても、ロボットと道具が接触する点数が道具の自由度より小さい、ロボットが扱う対象物の自由度がロボットの自由度より多い、ラケットによって制御できるボール速度ベクトル(6次元:並進と回転)の次元は高々5次元など、非線形システムの最適制御多点境界値問題の本質的な課題の一つして、制御可能な自由度が制御したい対象の自由度より少ないことであることが判明した。この顕著化した問題の解決は今後の課題としたい。
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