研究課題/領域番号 |
15K05862
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
井門 康司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40221775)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 振動制御 / ダンパー / 減衰力 / エラストマー / 免震 / 粒状体 |
研究実績の概要 |
両ロッド型粒状体ダンパーに球形エラストマー粒子を用いた場合について,減衰力を調べる実験を行った.エラストマー粒子として硬さやヤング率などの機械的性質が異なるエラストマーを材料として用いた場合,球形粒子の径(基準直径を3mmとした)やダンパーへの粒子充填率を変えた場合,強制加振の周波数や振幅,ダンパー設置角を変化させた場合について,それぞれ実験を行い減衰力を測定した.また,新たに衝撃荷重を負荷する実験装置を作製し,両ロッド型粒状体ダンパーについて,衝撃に対する応答特性も実験的に調べた.ある程度大きい充填率の場合には傾斜角依存性が大きく低減されるなどの基本的減衰力特性を明らかにした. 一方,片ロッド型粒状体ダンパーも新たに試作し,オリフィス部のあるピストンとオリフィス部を持たない押し込み型のピストンの2種類を作製した.オリフィス部のある場合については,エラストマー粒子の材質や充填率,ピストン径(オリフィス部のサイズ)や振幅,加振周波数などの減衰力への影響を実験的に明らかにした.また,オリフィス部のないピストンを用いた場合,粒状体を充填する領域は2つ部屋に分割されるが,それぞれの部屋の粒子充填率を同じにした場合について実験を行い,同様にエラストマー粒子の材質や充填率,加振周波数や振幅が減衰力に与える影響を実験的に調べた. エラストマーにミクロンサイズの鉄やニッケルなどの金属微粒子を混合してエラストマー粒子を作製し,内部に金属微粒子が分散することによって発生する粒子内部摩擦の増加などの効果を実験的に明らかにした.その結果,ミクロンサイズの微粒子を混合した場合の方が,減衰力が大きくなることが明らかとなった.さらに,混合する微粒子として球形シリコン粒子や金平糖形のシリコン微粒子を混合した場合についても実験を行い,金平糖形状の微粒子を混合した場合が,最も減衰力が大きくなる結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度行う予定としていた7項目,すなわちエラストマー粒子材質のダンパー減衰力への影響,片出しロッド型粒状体ダンパーの試作と基本特性,二室型片ロッド型粒状体ダンパーの試作と基本的減衰力特性,粒状体ダンパーの衝撃応答,金属微粒子を含む粒状体を用いたダンパーの減衰力特性,などの5項目については概ね基本的特性について解明ができた.さらに来年度実施を予定していた樹脂微粒子を含む粒状体を用いたダンパーの減衰力特性の解明についても前倒しで実施し,結果を得ている.一方,粒状体ダンパー内部の粒子挙動を解明するためのハイブリッド個別要素法のGPGPUを用いた計算コードの開発については,金属粒子を用いた場合等どうようのモデル化で解析を行ったものの,実験結果をうまく説明できる計算結果が得られなかったため,引き続き改良が必要となった.また異種粒子混合体による粒状体ダンパーの減衰力特性の解明についても次年度以降へ持ち越しとなった.以上のように,一部計画通り進んでいないものの,前倒しで進んでいる計画も有り,全体としては概ね順調に進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,両ロッド型および片ロッド型粒状体ダンパーについて,種々の条件が減衰力に与える影響を明らかにするとともに,ダンパー内部でのエラストマー粒子の挙動,変形状態や応力状態などを明らかにするため,透明容器を用いた可視化やハイブリッド個別要素法の開発などを行う.異種粒子混合体を用いた粒状体ダンパーの減衰力特性の解明など,本年度取りこぼした計画についても実施し,最終的にダンパーの減衰力特性を示す現象論的モデルを構築するために必要なデータベースを作成する.また,直動式のダンパーだけではなく,回転型の粒状体ダンパーに付いても試作し,その基本的な特性を実験的に明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施を予定していた実験の一部が実施できず,先送りとなったため,必要として確保していた実験材料費分が残ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度実施する実験において,必要な実験材料の調達などに使用する.
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