近年,自動車業界では,エネルギー問題の高まりから燃費向上が大きく叫ばれるようになっており,業界では,エンジンの燃焼方式の改良や軽量化だけでなく,ディーゼル化,省気筒数化,高負荷低回転域からのロックアップなどの方式が採用されている。一方では,高出力エンジンへのニーズも高い。自動車用オートマチックトランスミッションでも,そのような開発動向にともなう新たなシステムを開発しているが,その機構の複雑さゆえに,エンジンの爆発振動に起因した分数調波振動等の新たな非線形振動が多発して問題となっている。 本研究では,自動車用ATの飛躍的振動低減を図る最適設計法を確立するとともに,多発している非線形振動の発生メカニズムを解明し,その防止対策を確立することを目的としている。研究成果は,以下の通りである。 1.ロックアップダンパに多段断片線形ばねを用いた分数調波振動の対策について,基礎実験装置の改良を行うことにより,実験的に検証を行うとともに,実験機を対象とした理論解析を完了した。その結果,断片線形ばねを多段にすることで,分数調波振動を抑制できることがわかった。2.分数調波振動の防止対策の一環として,基礎実験装置に動吸振器を装着するための実験装置を製作した。分数調波振動を抑制するための動吸振器の最適設計について,動吸振器の減衰比と固有振動数に着目して,実験的に有効性を確認できた。また,同装置に対する理論解析を実施し,分数調波振動を抑制するための最適設計手法の検証を行った。3.振り子型動吸振器に対する解析モデルを用いて,自動車用ATの振動を低減するための最適な振り子型動吸振器の設計手法に関して理論解析を実施した。その結果,自動車用ATで発生する異常振動が振り子の非線形性によって生じることを理論的に確認できた。その研究成果を国際学会ICSV24で発表した。
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