研究課題/領域番号 |
15K05867
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
岡部 匡 宮崎大学, 工学部, 教授 (00185464)
|
研究分担者 |
小園 茂平 宮崎大学, 工学部, 教授 (10169302)
長田 尚一郎 宮崎大学, 工学部, 助教 (20218001)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 機械力学 / 非線形振動 / 撹拌 / 振動利用 / 磁気ばね / 非線形共振の利用 |
研究実績の概要 |
本研究は,各種産業分野の製品生産における混合工程の高効率化をはかるため,連続処理型の振動式混合装置の開発を行うことを目的とする.開発する振動式混合装置は,混合ユニットを基本構造とし,その混合ユニットを多層に連結した構造とする計画である.混合ユニットごとに,円筒状の攪拌槽内で磁気浮上する攪拌翼を,周期的に変動する外部磁気力により励振して共振を発生させる.攪拌翼を外部磁気力により励振するため,攪拌槽内液体が外部環境から完全に遮断でき,混合液への不純分物の混入等の問題は一切発生しないという長所を有する.さらに,機械系では避けられるべき共振現象を,攪拌翼の振動に有効利用していることも長所としてあげられる.本研究では,液中の攪拌翼の非線形挙動,振動翼による混合のメカニズムの解明など学術的に未解決な問題を解明し,高効率な振動型混合装置を開発する. 平成27年度は,1混合ユニット内の撹拌翼の加振方法について検討を行った.加振方法として採用したのは,1)コイルによる交流磁場,2)外部永久磁石による周期運動,の2種類の方式である.撹拌槽外部に設置したコイルによる発生する交流磁場による加振方法では,外部コイルと攪拌翼上に固定された永久磁石の磁場解析を実施し,混合液中でも撹拌翼を励振できる十分な加振力を発生できることを確認した.さらに試作機までを製作し,基礎実験を行った.一方,外部永久磁石の周期的な運動により撹拌翼を周期励振する加振方法についても検討を行い,試作機を作成して有効性を確認している.これらの加振方法の長所・短所を評価し,今後目的とする混合ユニット直列結合型振動式混合装置の開発の基礎を確立することができた.さらに,混合ユニットの仕様(撹拌槽の大きさや形状,撹拌翼の形状など)についても検討を行い,撹拌翼の運動に関する基礎実験までを完了した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.液中の撹拌翼に対する加振方法として,撹拌槽の外部に設置したコイルにより発生する交流磁場を利用する方法について検討した.有限要素法による詳細な磁場解析を通して,この電磁加振方式で,所望の振幅と振動数で振動を発生できる十分な加振力が得られることが明らかとなったため,試作機を製作し,実験的に撹拌翼の運動を確認した.過去の実績(実用)例から十分な効率的な混合が見込めることから,液中(水)における攪拌フィンの振動特性の目標として,共振振動数が15Hz以上,振幅を6mm以上とすることを目標としていた.基礎実験の結果,この目標を十分達成できる見通しを得ることできた.本研究で開発する振動型混合装置の加振方法として,非常に多くの利点をもつことが明らかとなった.今後,この加振方式については,コイルの最適仕様や配置などについて,最適化を行っていく計画である. 2.一方,外部永久磁石の周期的な運動により撹拌翼を周期励振する加振方法については,実際に混合装置の試作までを完了し,基礎的な実験までを終えた.様々な運転条件(運転振動数,撹拌の振動振幅など)にも,十分対応できることが明らかとなった. 3.今後混合装置を開発していく上で,撹拌翼の運動の数値シミュレーションが不可欠となる.このため,平成27年度は,数値解析の際に必要となる液中攪拌翼の減衰能の同定法について検討を行った.位相法による減衰能の同定法を採用し,そのための実験装置を設計・製作した.基本的な実験を終えており,撹拌翼の減衰能の同定が可能であるとの見通しを得ることができた. 4.攪拌フィンで擾乱される翼周辺流体の運動の解析を実施するため,粒子法(SPH法)の計算理論を基盤とした流体運動解析プログラムの開発を行っているが,まだ完成には至らず開発途中の段階である.
|
今後の研究の推進方策 |
1.本ミキサーでは,最終的には複数の混合ユニットを直列に結合した振動型混合装置を開発する計画である.平成27年度は,1つの混合ユニットの加振方法について,2種類の方式について検討を行った.これら二つの加振方式とも,本混合装置に有効利用できることが確認できた.平成28年度は,さらにこれらの加振方式のさらなる改良を行い,より効率的に加振できるようにしていく計画である.特に,加振用コイルについては,その仕様,個数,配置など詳細に検討していく. 2.平成27年度に製作した混合装置は,まだ試作機の段階であり,撹拌槽や撹拌翼の形状,さらには混合装置の全体の詳細設計は行っていない.平成28年度以降は,実用化を見据えて,混合装置の設計を行い,実機を完成させる計画である. 3.平成28年度には,製作した混合装置を用いて,撹拌翼の運動に関する基礎実験を実施する計画である.特に混合液中で振動する攪拌翼の運動が,当初の目標を達成できるかが重要である.このため,実験を重ねて,混合装置に関する様々な詳細仕様を決定しく計画である. 4.撹拌槽内の混合液の流れを把握することは,より効率的な混合を実現できる撹拌翼の形状の決定に必要である.このため,撹拌槽内の流体の運動解析を可能とする粒子法(SPH法)の計算プログラムを完成させる.より多くの例題に対し数値計算を実行し,既存の解法による計算結果との整合性を検証し,本研究で作成したプログラムの信頼性を確認する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究では,電磁力加振式の振動型混合装置の基礎実験用の試作機を設計・製作したが,現状では基礎実験までを終えた段階である.振動型混合装置の仕様の決定後でないと,計測システムを詳細に構築することができないので,これらの予算はまだ使用していない.また,高速演算用コンピュータについても,まだ解析プログラムの作成段階であるため,コンピュータの導入は行っていない.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度において,助成金は,主に(1)電磁力加振式及び永久磁石加振式の振動方混合装置,及び関連する実験装置の製作のための材料費・加工費・制作費,(2)撹拌翼の3次元運動の計測用の計測システム(高速度カメラ,計測用ソフトウェア)の購入費,(3)数値計算用コンピュータの購入費,(4)情報収集及び成果発表のための旅費として使用する計画である.
|