研究課題/領域番号 |
15K05868
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
盆子原 康博 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10294886)
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研究分担者 |
近藤 孝広 九州大学, 工学研究院, 教授 (80136522)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非線形振動 / 自励振動 / 自己同期現象 / 振動制御 / 建設機械 / 衝突振動 / シューティング法 / 安定判別 |
研究実績の概要 |
本研究では,手持ち振動工具への応用に向けた同期振動発生機構の最適設計法を確立するとともに,実用的な性能を達成した実規模モデルを開発することを目的とする.本年度は,前年度おいて開発した振動ランマと電動ハンマの試作機を対象として,手腕振動の更なる低減化と打撃性能の向上を図るべく,実験装置の改良を試みた. まず,振動ランマに対しては,昨年度では,実機と同等レベルの性能を有する試作機の開発を試みたものの,搭載したDCモータが破損するなどの問題が生じた.そこで,本年度は,数値計算結果に基づいて系パラメータの変更を試み,再度試作機を製作した.砂の締め固め試験により,性能評価を行った結果,打撃力については測定した範囲で最大1.5 kN以上を達成した.また,日振動ばく露量についても対策値である2.5m/s2以下に抑えることに成功した.しながら,設計変更した機構でもやはり構造的な強度が足りず,打撃力が増大するとDCモータが損傷する結果となった. 次に,電動ハンマに対しては,昨年度において開発した試作機において,稼動時に横揺れ振動が発生するという問題を解決するため,打撃機構の改良を試み,新しい試作機を製作した.砂の締め固め試験により,性能評価を行った結果,課題となっていた横揺れ振動の発生を完全に防止することに成功した.さらに,最適な系パラメータや運転条件について調べた結果,押しつけ力や初期クランク角が日振動ばく露量と打撃力に強く影響することを確認した.現在,最適設計法の確立に向けて,継続的な検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振動ランマに関する研究では,初年度に引き続いて実機と同等の性能を達成する試作機の開発に取り組んだものの,構造の強度不足のために,試作機が故障したため,目標達成には至らなかった.そこで,本年度の検討結果を基にして,強度不足を補った試作機を新たに設計した.この設計変更では,DCモータの軸に軸受けを追加して設置することで,打撃時の衝撃に耐え得るように工夫した.現在,その試作機を製作している段階であり,目標達成の見込みは十分にあると考える. 一方,電動ハンマに関する研究では,改良した試作機を用いて検証実験を行った結果,制振と励振とを同時に行う運動状態が実現可能であること,ならびに日振動ばく露量が対策値以下に抑えられることが確認された.また,数値計算と実験により,運転条件や系パラメータが機械的性能に及ぼす影響についても検討を行った.今後さらに詳しく検証する予定であるが,一部では最適な設計法についても明らかになりつつ,試作機の更なる性能向上が見込まれる. なお,上述の研究項目の進捗状況に合わせて,数値計算プログラムの開発,並びに実験装置の構築を行っており,実際の使用状況を想定した試作機の定量的な性能評価が実施可能な状況にある. 以上の理由により,本研究はほぼ当初の計画通り進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる平成29年度では,研究目的である同期振動発生機構の実用化と最適設計法の確立を達成するため,これまでの研究項目を継続的に実施する.具体的な実施内容は次の通りである. まず,振動ランマに関する研究では,実機と同等レベルの打撃性能の有する試作機の開発を行う.その上で,実際の使用状況を考慮した条件下で地面の締め固め試験を実施して,制振性能や打撃性能を評価する.目標値としては,日振動ばく露量が対策値以下となる状況で,打撃力を5.0kN程度まで達成したいと考えている.また,突発的な使用条件の変化に対して,制振と励振とを同時実現する最適な運動状態が安定して維持できるかどうか検証する. 次に,電動ハンマに関する研究では,開発した試作機の性能評価を進めるとともに,実用化を図るために,出力の大きなモータを使用した試作機の開発を行う.電動ハンマの試作機についても,目標値として,日振動ばく露量が対策値以下となる状況で,打撃力を2.0kN程度を達成したいと考えている.また,これまでは電動ハンマでも砂の締め固め試験のみ実施していたが,実際の用途として多い,コンクリート等の破砕実験についても実施し,試作機の実用可能性について評価を行う予定である. 以上の研究で得た知見から,それぞれの工具の最適設計法の確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな実験装置を開発する過程で,設計が間に合わず,材料費に充てる予算に未使用額が発生した.新しい実験装置の製作は,次年度にすぐに実施する予定であるため,本予算は繰り越すことが望ましいと判断した.
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については,次年度の予算と合わせて,実験装置の材料費に充当する予定である.
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