H29年度は、打撃試験装置の製作と、それを用いた実地計測を行った。試験装置の製作に当たっては、打撃によって生じる振動を測定するプローブ部の形状の影響が大きかったので、種々の形状のプローブを製作して実験を行い、最も精度良く計測できる形状を決定した。通常は加速度センサーを対象物に貼り付けて加速度を測定するが、今回の研究では打撃点を移動させながら計測を行う必要があったために、加速度センサーをプローブに取付け、対象の壁面に押し当てることで加速度を計測した。このため、プローブ部の慣性質量が加速度を測定するときの反力を生じさせる構造となるので、プローブ部は重い方が良いが、試験装置の扱いやすさとは矛盾する。このため、試行錯誤的にプローブの重さを変えた実験を行い、可能な限り計測精度に影響を与えないギリギリの重さのプローブを決定した。 実地計測は名古屋大学にある研修施設N2U-BRIDGEで行った。研修施設には、コンクリート壁の内部に空洞(浮き)や鉄筋を埋め込んだ検査用の壁面が用意されているので、この壁面に打撃試験装置を押しつけ、鋼球の打撃によって生じるコンクリートの振動(加速度)を4つのセンサーで計測した。計測は高さ2m、幅15mほどの壁面全面を70cmほどの間隔で行い、浮きのある箇所とない箇所を判別した。計測したデータに基づいてコンクリート内部の空洞の有無を独立成分分析の手法を用いて表面波と内部で反射した弾性波を分離することにより評価したところ精度良く評価できることが分かった。
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