研究課題/領域番号 |
15K05872
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
阿南 景子 大阪電気通信大学, 工学部, 准教授 (30346077)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 機械力学 / 流体関連振動 / 自励振動 / 振動特性 / 動的安全性 / 振動モード |
研究実績の概要 |
大型テンタゲート式水門の崩壊事故の再発を未然に防ぐために、本質的に動的不安定特性を有するゲートを速やかに判別することのできるシステムを設計・構築することを目的に、以下の研究を行った。 (1)モデル実験:実用テンタゲートの固有振動モードを厳密に再現した大型三次元モデルゲートを使用して、上流側水位がゲートの固有振動モードにおよぼす影響についての実験を行った。特に、水をせき止めるスキンプレートの流水方向振動に着目して実験を行った。上流側水位がゲート高さの20%以上の場合について実験を行った。上流側の水位が変化すると、かなり大きな水の付加質量も変化するが、その付加質量は空中での固有振動数を水中で大幅に低下させる作用のみを持ち、ゲートの振動モードには何ら影響を与えないことを確認した。上流側水位が低い場合や全く水が作用していない状態については、振動数が非常に高くなるため計測が難しく十分な実験が実施できていないので、平成29年度に引き続き実施する必要がある。 (2)動的安定判別システムの設計:テンタゲート式水門の動的安定/不安定を判別するシステムを設計するために、これまでに確立してきた理論解析を整理し、安定判別に必要な諸元を明らかにした。それを用いて、実験、理論解析、コンピュータシミュレーションをまとめたシステムの基本的な枠組みについて検討した。 (3)研究成果の発表:研究により得られた成果を国際会議論文および学術論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が平成28年4月に所属を変更したことにより、年度当初にスムーズに研究を開始できなかったことの影響が大きい。実験で使用する水槽等は、新しい所属に設置されていたものを使用しているが、モデルゲートの調整やセットアップに予定以上に時間を要したため、実験の進捗に遅れが出ている。また、前所属で使用していたFEM解析ソフトが使用できなくなったため、FEMによる検討が進められなかった。しかしながら、平成29年度は年度当初より実験およびFEM解析を開始しており、夏までに遅れを取り戻せる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果をもとに、動的安定/不安定を判別するシステムを設計・構築するために、以下の研究を進める。 (1)モデル実験:引き続き、大型3次元モデルゲートを用い、上流側の水位が固有振動モードに与える影響についての実験を行う。特に、これまでに十分な実験データが得られていない上流側水位が低い場合についての実験を行う。上流側水位が低い状態でゲートが動的に不安定になることはほとんどなく、また、水位が低い場合には固有振動数が高くなるため正確な計測を行うことが難しい。しかしながら、実用テンタゲートの固有振動特性を実験により計測する場合、満水位よりも水位が低い状態のほうが実験を実施しやすいという背景から、水位が低い状態での固有振動特性を用いてすべての水位における動的安定判別が行えるようにするために、水位が低い状態の振動モードと水の付加質量の関係を明らかにしておく必要がある。 (2)FEM解析:新たに導入したFEM解析ソフトを用い、テンタゲートに水の付加質量が作用した状態を再現し、固有振動特性の解析を行う。 (3)動的安定判別システムの設計:上記の研究結果およびこれまでの研究結果を用いて、テンタゲートの動的安定判別を行うためのシステム設計を行う。ゲート設計や管理に携わるエンジニアが利用できるよう、視覚的ユーザーインターフェースを備えた解析システムの設計を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月に研究代表者が所属を変更し、実験装置の再立ち上げ等に時間を要し、当初計画していた実験が予定通り完了できなかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に当初計画通りに実施できなかったモデル実験を遂行すべく、現在すでに新たなモデルゲートの作製に取り掛かっている。モデル作成費用および実験時の消耗品購入費用として使用する。
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