研究課題
自動車の高周波域(500~5000Hz)の車内騒音で寄与度の高いフロアまわりを想定し、半無響室に設置された簡易的な遮音性能計測装置(残響箱)を用いて、パネルにフェルトとフィルムとフェルトが積層された吸遮音材の遮音性能を計測した。フィルムが上下フェルトと接着された場合と接着されていない場合で遮音性能が大きく変化することを確認した。音圧加振時の表層フェルトの振動をレーザードップラー振動計で計測し接着時と非接着時で振動レベルが変化している事を確認した。本現象を解明するため、Biot理論を用いた弾性多孔体の有限要素法を用いて積層吸遮音材の振動計算を行った。計算結果は計測結果をほぼ再現しており、接着時には弾性多孔体の内部空気と骨格が同様の振動をするのに対し、非接着時は大きく異なる振動をしており、これにより遮音性能の変化が起こることがわかった。また、音響解析の精度向上のため、自動車のアッパーバックまわりを模擬したテストピースを作成し、通気性のあるトリムを配置させた場合の吸音・吸音遮音性能の変化を実験計測により確認した。解析精度検証を行ない、十分な解析精度であることを確認した。また、ウレタンとフェルトの厚さを変更して計算を行ない、1/3オクターブ周波数毎でどの厚さが最も減音しているか計算できた。さらに、新しい吸音材の研究開発のため、繊維径が1μm~4μmのナノ繊維について、繊維径・繊維密度・サンプル厚さ・サンプル密度から吸音率を予測する手法を開発した。流れ抵抗と熱的特性長について計測結果から実験関係式を導き、Limp frame モデルに適用することで、音響管を用いた吸音率計測結果と比較しておおむね良い一致を示した。これにより、サンプル作製前に吸音率の予測が可能になり、狙いの吸音率の製品の作成も可能となった。本研究に関連する内容で投稿論文を1件、学会発表(共著含む)を7件行った。
1: 当初の計画以上に進展している
平成27年度は、以下の2つの研究を予定していた。・振動解析の解析精度向上のためパネルにフェルトとフィルムとフェルトが積層された吸遮音材の振動解析・音響解析の解析精度向上のため、通気性のある自動車トリムとトリム裏空間と車室空間を模擬した簡易モデルの解析それぞれ実験結果と比較し、FEモデル化の工夫やプログラムコードの改良により解析精度を向上出来た。さらに、予定していた上記2つの内容に加え、新しい吸音材の研究開発のため繊維径が1μm~4μmのナノ繊維について予測技術の開発を行ったため。
平成27年度は、自動車で良く用いられるようになってきたフィルムを用いた積層タイプの吸遮音材の振動解析を行い、解析精度を向上できたので、平成28年度は本モデルに音響空間を追加し、遮音性能の直接計算を目指す。また、繊維径が細ければ細いほど吸音性能が良い事が予測計算からも確認できたため、実際の自動車部品に適用できるよう、数種類の繊維径が異なる繊維や積層タイプの極細繊維材の吸音率予測技術を開発する。上記技術を利用して、最終的にはCAEを用いた自動車(大規模構造物)を想定した弾性体・粘弾性体・多孔体・音響空間を含む系の振動音響連成解析手法の開発と軽量防音構造の提案を目指す。
当初予定していた金額よりHD(ハードディスク)が安く購入できたため。
平成28年度の研究に当初予定分とあわせて使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Mechanical, Aerospace, Industrial, Mechatronic and Manufacturing Engineering
巻: Vol:9, No:9 ページ: pp1386-1390