脆性材料の加工法の1つに超音波縦振動する工具ホーンと砥粒を用いた超音波加工法がある。従来の超音波加工は縦振動のみを用いていたため,加工時間の短縮が困難となっていた。この問題に対して,申請者らは縦振動とねじり振動を組み合わせた複合振動を用いた加工を提案しており,また,複合振動を用いることで加工時間が短縮し,加工精度が向上することを明らかにしている。しかし,複合振動による超音波加工の原理解明はまだ行われていない。そこで本研究では複合振動を用いた場合の加工原理の解明によって,更なる加工時間の短縮,及び加工精度の向上を目指している。 平成29年度の研究業績としては,複合振動を用いた場合の加工原理の解明のために,加工中の砥粒の挙動について観察を行った。観察は平成27年度に開発した各種装置を用い,ソーダライムガラスに対して先端が直径8 mmの工具ホーンを用いて加工を行った際の砥粒の挙動について観察を行った。その結果,縦振動を用いた場合の加工痕は点状または短い線状のものが生じていた。これより,縦振動による加工の際の砥粒は,ハンマリング効果によりソーダライムガラスに衝突していると考えられ,過去の検討と同様の結果となった。一方,複合振動を用いた場合の加工痕は,点状の他に工具ホーンの円周方向に沿うような弧状のものが多く生じていた。これより,複合振動による加工の際の砥粒は,縦振動によるハンマリング効果による衝突とねじり振動により加工対象を削り取る2つの挙動をしていると考えられる。これらより,複合振動を用いた場合の加工は,縦振動と比較して,砥粒1つあたりに加工量が多くなり,加工時間が短縮されたことが考えられる。また,その加工時間の短縮に伴い,加工停滞時の加工精度の悪化を防止し,結果として加工精度も向上したと考えられる。
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