著者らが提案した気柱共鳴予測手法のベースとなる渦―音場モデル化手法(単一管からの放出渦の振動子によるモデル化と伝熱管群からの膨大な放出渦の挙動の確率論手法によるモデル化)の妥当性を検証すべく、実機ボイラの2次元模型を用いた実験と現象論的数値モデルによる検討を進めてきた. これまでの研究で、流れ方向の管配列ピッチ比が2.0の格子配列管群における気柱共鳴の基本モードを対象に、気柱共鳴発生時における音響粒子と渦放出の相関性(コヒーレンス)に着目し、共鳴振幅の増加とともに相関性も増大すること、両者の位相差が共鳴振幅の増減に伴い大きく変化することから、提案するモデル化の妥当性を確認できた.また、共鳴予測に必要なパラメータ(前記の「相関性」と共鳴振幅の関係を表す)の値も同定した. この結果をさらに広い実機伝熱管群の設計条件において確認するため、種々の管群配置条件、より高次の気柱共鳴モードにおいて検証すべく、抗力方向の管配列のピッチ比が3.0,3.5,4.0の格子配列管群において,気柱共鳴現象発生前後の渦放出と共鳴音圧変動との位相関係を実験的に調査した.抗力方向の管ピッチ比が3.0のとき,気柱共鳴現象が最も強くなり,音圧レベルが最大となった.この配列のとき,気柱共鳴現象発生前後において管の左右の圧力差と側壁音圧との間の位相差は-0.5π rad変化した.この結果は,渦系が音響粒子の加速度により励振されると仮定して理論式から求めた値と良く一致する.後流振動子モデルを用いて渦と共鳴音場の相互作用を定式化し,渦と共鳴音響の相互作用のフィードバック形式が加速度フィードバックであることがわかった.
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