平成29年度は、高温高湿環境下や圧力印加状態において粘弾性特性を測定できる仕組みを構築し、厚さ0.5mmの天然ゴム(NR)等の粘弾性特性を測定した。また、その結果を既存の測定器と比較した。既存の装置としては、昨年と同様に測定周波数範囲が1kHzと広い、株式会社ユービーエム製のReogel-E4000を用いた。評価の結果、次の四点の成果を得た。 (1)NRの測定におけるせん断モードの固有振動数は11kHzであったが、測定装置の支持系の振動モードが6.4kHzに現れた影響により、測定できる周波数は6kHzに止まった。しかし、従来の測定範囲を6倍に拡大することができた。 (2)温湿度を制御した測定を行い、温度時間換算測を用いて高周波数領域の粘弾性を推定した。既存の装置では8.4MHzまでの測定に止まっていたが、我々の開発した装置では、50.5MHzまで測定周波数を約6倍に拡大できた。また、既存の測定装置における1MHzを超える高周波数領域の測定結果は、ガラス転移に近い温度での測定結果から換算している影響により、本研究による開発装置よりも貯蔵弾性率が高めに測定されていたことがわかった。 (3)加圧環境下における測定の結果、貯蔵弾性率と損失弾性率は増加傾向にあるが、損失正接は顕著な変化がないことが分かった。 (4)課題であった6.4kHzの支持系の振動モードについて、アクティブ・ダンピング制御による制振を試みた。指示系の振動ピークは10dB低下でき一定の効果が見られたものの、粘弾性特性の測定周波数を拡大できるまでには至らなかった。
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