研究課題/領域番号 |
15K05882
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
井上 昌信 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (70253549)
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研究分担者 |
平木 講儒 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (40249933)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粒状体ダンパ |
研究実績の概要 |
垂直振動系の制振を目的として,振動体内部の空洞に粒状体を封入した,いわゆる「粒状体ダンパ」の減衰効果の予測手法について,これまでより「封入した粒子群を反発係数が零の単体とみなした近似解析法」を提案してきた.一方で,他の研究者からは個別要素法などを利用した数値シミュレーションによる予測方法が数多く発表されてきたものの,粒子間のパラメータなど設定など取扱いが難しい面がある. また,粒状体ダンパの実利用を考えたとき,制振対象物の内部に適当な空洞があればそれを利用するのが良いが,都合よく空間を確保することは困難であることが多い. そこで本研究では,従来同様1自由度垂直振動構造物を対象とし,制振対象物体の外部に粒子を封入したカプセルを貼付する方法の検討を行っている.カプセルは,当初,市販の汎用蓋付きの樹脂製ボトル容器を使っていたが,任意の充填量を設定できるよう,3Dプリンタによる造形に変更し,外寸で高さ50mm,直径21mm,質量は約3gのものを試作した.このカプセルを,振動体に2個または4個装着して比較実験を行った.カプセル部に封入する粒子については,2mmおよび8mmの直径の鉄球を用いた. また実験パラメータとして,封入粒子の粒径や封入量などに着目し,それぞれの条件下での制振効果の比較を行うとともに,これまで提案してきた封入粒子を単体粒子として扱う近似解析法が,粒状体を分割装着した場合でも適用可能か否かについて検証を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究を基に,動吸振器等の設計指針と同様の質量比10%の粒子封入量(使用粒状体粒径2mm)で実験を行った.その結果,2分割,4分割のいずれの場合も,粒状体ダンパの効果が確認され,さらに反発係数が0の単体としての近似解法で表すことができた.この時のカプセル内の層数は10層程度あり,ばらつくことなく一体運動がなされた結果であると考える.一方,加振レベルを上げ,かつ質量比を5%と減らした場合には,カプセル内で粒子が激しく動き,カプセル装着前(振動体そのもの)の共振曲線に沿い,近似解法とも合致しない結果となった.そこで同じ封入粒状体質量のカプセルを2個追加し,4個合計で質量比が10%になるように変更したところ,振幅も抑えられ,付加質量に対する共振曲線に沿い,粒状体ダンパの効果が出ていることが確認できた
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今後の研究の推進方策 |
これまで1つの振動体に対し,粒状体を封入もしくは外部にカプセルに封入したものを取り付けることで効果の有無を調べてきたが,最終年度となり,振動体質量や等価ばね定数が異なる,すなわち共振振動数が異なるシステムに対しても検証する必要があると考える. またカプセル形状も封入粒子の粒径に対するカプセルの直径の関係や,封入後のカプセル内の隙間量など検討が必要であると考えており,それらの条件に見合うカプセルの造形も行う予定である. これまでの実験から,何種類かの例えばS,M,Lサイズのようなカプセルユニットを用意し,制振対象物体の質量や加振レベルに応じて選定の上,さらに使用カプセル数で調整するというような使用イメージを考えている. 一方,単体粒子とみなす近似解析法による制振予測プログラムについては,現有のWindows環境で動作するようにするようソースコードの書き換えを前年度計画に挙げており,概ね書き換えたものの,今回使用したコンパイラが本校IT管理部門からセキュリティーの関係上,使用を控えて欲しいと通達があり,さらなる更新が必要となったため,今年度,並行してこちらの対応も行う予定とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の予算額に対し,研究進捗状況から国内講演会での発表のみになったため,また謝金についても同様の理由から支出せずに終わったため,繰越となった.これについては,研究期間を延長申請したため,旅費の繰越額から実験に必要な物品費にも充てる予定である.また謝金については,本年度が研究最終年度であり,技術検討やこれまでの比較対象の情報提供を求めるために使用する予定である.
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