研究課題
本年度は,嚥下との関係が深い口腔周囲筋と口腔内の圧力との関係について調べることを目的として,“頬の膨らまし運動”の計測を行った.本装置は,柔らかいペットボトル本体と小型の気圧センサが設置されたキャップ(マウスピース)で構成されており,マウスピースを口に咥えてペットボトル内の空気を吸い込み,そして吹き込む際の口腔内の圧力変動を計測した.同時に口輪筋の筋電位信号を計測し,口輪筋のトレーニングを効率的に行うための運動について検討した.取得した筋電信号に対して,振幅確率密度関数による解析(APDF解析)を行い,平均的な負荷の値を求めることで,運動の評価を行った.その結果,吹き込み動作を保持する運動を行うことで,口輪筋の筋活動量が大きくなることが分かった.また,吹き込み動作開始から保持に至るまでの区間では高い筋活動量を示しているという結果を得た.次に,吸気および呼気の速度を考慮して同様の実験を行い,動作開始から保持に至るまでの区間における口輪筋の筋活動量を高める運動について検討した.その結果,できる限り速く吹き込む動作が有効であることが分かった.また,径の細いマウスピースを用いることで,より効率的に口輪筋を鍛えられることが分かった.以上の結果をもとに,ここでは空気を吹き込む動作を保持することに焦点を当てて,口輪筋を鍛えるための補助装置の製作を行った.本装置では,シリンジ内部に空気を吹き込み,圧力が高まることでシリンジ内部のピストンが可動する仕様となっており,このピストンの動きをサーボモータで抑制することで,使用者の吹き込み動作に負荷を与えた.検証の結果,高い圧力で吹き込み動作を行うことで高い筋活動量を得ることができた.一方,低い圧力での吹き込み動作も筋活動が活発になることが分かった.
2: おおむね順調に進展している
本年度は,口腔内圧の変動を調べるための計測システムを構築し,口輪筋の筋活動が活発となるための条件をいくつか見出すことができた.また,負荷を与えるための補助装置の製作を行い,おおむね研究計画書の項目を実施している.
平成27年度に構築した計測システムおよび補助装置を利用することで,頬の外側から指先で負荷を加えたときの口輪筋の筋活動を計測し,圧力,擦り動作の速さの適切な条件を見出す.また,指先を模倣した顔面との接触を伴ったマニピュレータの製作に着手する.
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Journal of Image and Graphics
巻: Vol.4, No.1 ページ: 1-5
International Journal of Mechanical Engineering and Robotics Research
巻: Vol.14, No.3 ページ: 233-237
ライフサポート学会
巻: Vol.12, No.4 ページ: 148-151
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