研究課題/領域番号 |
15K05891
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹木 亮 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (00262501)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精密機械システム / 微細作業 / マイクロハンドリング |
研究実績の概要 |
オペレータにマニピュレータが対象を把持した際の手応えを伝えるシステムを実現するため,液圧駆動を用いた把持機構を試作した.先行研究において申請者が開発した液圧駆動型関節機構の基本原理を用いて,把持部の開閉をベローズの伸張によって行う機構とした.試作機は生体組織を把持できるよう医療鉗子を模した物である.まず最初に鉗子部分の試作を行い,より微細な力を検出できるよう設計開発を行った.パスカルの定理により,原理的にはエンドエフェクタ―側と液供給を行う側での断面積比を大きくすることで計測する力を増幅することができる.試作機ではおよそ500倍程度のゲインが得られるものとした.この試作した鉗子機構を用いて,精度向上について評価実験を行った.その結果,理論値に近い増幅比が得られ,従来よりも50%程度,把持力の検出精度を高めることができ,より高精度に把持力を検出できる機構が実現できた.さらに液供給を行う機構についても,従来シリンダによる供給機構であったものを開発に3Dプリンタ等を用いることで,流路を一体化させる機構への設計改善を行った.これについても評価実験を行い,これまで精度低下を招く原因であった液漏れによる圧力低下をほぼ0に抑えることができ,またヒステリシスについても低減することができた.今後は本システムを用いて生体を把持する評価実験を行い,微細な力覚をフィードバックできるマニピュレートシステムの実用化を目指す.また一方で,生体を把持した際の剛性や粘弾性などの機械的特性をデータ化する生体組織の機械的特性の数値化を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度で予定していた把持機構の改良について,従来手法よりも高精度に把持力を検出することができた.平成28年度に予定していたマニピュレートシステムの構築について,既にシステムを完成させ評価実験を行える段階である.平成29年度の評価実験について既に医学部と共同で行う生体を用いた評価実験を計画しており,そのための予備実験を既に行っている.今後,本申請課題の最終的な目標を達成する目途を既に付けている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は構築した力覚フィードバックできるマニピュレートシステムを用いて,評価実験を行い,把持する感覚の知覚や,把持する対象の機械的特性の判別の可否について調べる.評価については医師など医療関係者らが実験に参画し,実施する予定である.最終的にこれらの評価を基に,本システムの実用に対する有効性を示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度におけるフィードバックシステムの構築について,困難が予想された制御装置の開発が予想以上に順調に進み,当初,想定していたトライアルのための試作品の開発等が必要なくなったため,予定していた金額よりも少ない執行額であった.
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度における評価実験をより充実したものとするため,また本成果を国際的にアピールするため,当初の予算に対し実験試料の購入費と旅費を拡充させる.
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