研究課題/領域番号 |
15K05897
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
土谷 茂樹 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30283956)
|
研究分担者 |
幹 浩文 和歌山大学, システム工学部, 講師 (20403363)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 自発運動 / マランゴニ効果 / 表面張力 / 制御 / 電界 / 磁界 / 電気化学反応 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
マランゴニ効果による液面での自発運動の電磁界による制御を目的とする。液面の界面活性物質に濃度分布があると表面張力勾配により液面を広がり(拡張)マランゴニ対流を生じる。運動は同対流の反作用で起きる。運動の燃料である界面活性物質の拡張の制御により運動制御が可能である。低環境負荷物質と期待され界面活性を有し電界と相互作用するイオン液体に着目した。 1.イミダゾリウムイオン液体の純水及び食塩水表面での拡張に及ぼす電界影響のイオン液体種依存性を評価した。食塩水より純水の方が拡張速度の電界(10kV/cm)影響が大きかった。純水では、疎水性イオン液体の拡張速度は水中から水面に向かう電界印加時に増加(25%)し逆方向の電界印加時に減少(15%)した。親水性イオン液体では電界方向に関係なく拡張速度は減少(最大25%)した。電界によるクーロン力によりイオン液体の水面での分布や配向が変化したためと考える。食塩水では塩素、ナトリウムイオンにより電界が遮蔽され電界影響が低下したと考える。 2.マランゴニ効果による自発運動の推進力は運動素子が搭載する界面活性物質と液面との接触部形状に依存する。液体状物質では接触部形状が不安定なため、燃料(イオン液体)をゲル化し運動制御の容易化を試みた。ゲル化により発生力の時間変化傾向が大きく変化した。長アルキル鎖のカチオンを持つイオン液体ではゲル化により最大推進力、持続時間が増加し、推進力が安定した。 3.マランゴニ対流の原因となる界面活性物質(イオン液体)の水面での拡張の評価及びその物理化学、流体力学モデルの構築を行った。評価イオン液体の拡張速度は従来理論の予測値より小さかった。カチオン-アニオン間の静電相互作用によると考える。疎水性イオン液体の拡張では拡張部先端が周期的に乱れる不安定領域を生じた。拡張部前面の水面から受ける圧力により拡張領域に水が浸入したためと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した3種類の自発運動制御原理のうち、磁界及び電気化学反応によるマランゴニ対流の制御に関する評価はH27年度にほぼ完了した。その結果、磁性イオン液体によるマランゴニ対流の磁界による制御、酸化還元活性界面活性剤の電気化学反応によるマランゴニ対流の制御では、磁界及び電気化学反応による対流速度の変化(2-3mm/s以下)が小さく、これらの制御原理を自発運動制御に用いることは難しいと判断した。H28年度はイオン性界面活性剤によるマランゴニ対流の電界による制御に絞り、同マランゴニ対流の電界影響に及ぼす種々の条件(イオン液体種、電界方向、自発運動環境)の影響を詳細に評価すると共に、その原因解明のため電界がイオン性界面活性剤(イオン液体)水溶液の表面張力に及ぼす影響を評価した。実際の運動素子を用いた電界影響の評価には至らなかったが、H28年度に得られた知見は次年度に予定している運動素子による評価に反映することができる。なお、当初の予定になかったゲル化イオン液体を燃料とする運動素子を作製し、ゲル作製条件やノズル部形状の推進特性(推進力の大きさとその時間変化)に及ぼす影響を評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
実際に運動素子を作製し、液面でのマランゴニ対流や推進特性に及ぼす電極の形状や配置、ノズル部形状、燃料となる界面活性物質(ゲル化イオン液体も含む)の種類などの影響を評価して最適構造や材料を提案する。また、当初の予定にはなかったが、光反応性の界面活性物質を用い、自発運動の光による制御を試みる。これらの評価によって明らかになった運動素子の推進特性を説明するため、物理化学(界面化学)及び流体力学の理論を組み合わせ、推進モデルを構築する。さらに、これまで明らかになった物理化学的現象のメカニズム解明を行い、新たな原理の自発運動の提案やその制御につなげていきたい。必要に応じて、当学部の物理化学系研究者に相談を申し入れる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行する上で必要な薬品、材料・部品、消耗品をほぼ充当できた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、薬品、材料・部品、消耗品や研究資料の購入、及び研究成果の発表(国際会議、国内会議、論文投稿)に充てる予定である。
|