化学マランゴニ効果による自発運動の電磁界による制御を目的とする。運動素子から液面に放出された界面活性剤分子に濃度分布があると表面張力勾配によりマランゴニ対流が生じ、その反作用により素子が推進する。マランゴニ対流による界面活性物質の液面での拡がり(拡張)の状態を制御できれば素子の運動制御が可能である。 電界と相互作用するイオン性界面活性物質の水面での拡張状態が電界により制御可能であるとの昨年度までに得られた知見に基づき、プラスチック基板をレーザ加工して液面への界面活性物質放出用ノズルを有する運動素子(長さ約30 mm)を作製し、イミダゾリウム系イオン液体及び一般的な陰イオン界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を燃料とする運動素子の推進力に及ぼす電界(667 kV/m)の影響を評価した。 界面活性効果が最も大きなSDS使用した時に最も大きな推進力が得られたが、推進時間は最も短かった。イオン液体を用いた場合、電界無印加時では、界面活性効果を持つカチオンのアルキル鎖長が長く表面張力が小さなイオン液体を使用した時ほど推進力が大きく、推進時間が長かった。カチオンが同じでアニオンが異なるイオン液体では、アニオンが疎水性である方が推進力が大きく、推進時間も長かった。推進力に及ぼす電界印加の効果については、SDSや水溶性のイオン液体では顕著に見られなかったが、疎水性イオン液体では電界印加により最大で約1/2まで推進力が減少した。電界から受けるクーロン力によりイオン液体中のカチオンの水面での濃度または配向状態が変化し、電界無印加時よりも水面の表面張力が増加することで推進力が減少したと考えられる。また、水溶性の界面活性物質では、ノズルから水面に放出された界面活性物質が水中に溶解することにより推進時間が減少したと考えられる。
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