研究課題/領域番号 |
15K05903
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
三上 貞芳 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (50229655)
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研究分担者 |
兵頭 和幸 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (90550517)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 2足歩行ロボット / 受動歩行 / 歩行安定化 / 機構 / 靴 |
研究実績の概要 |
本研究は2足歩行ロボットの安定歩行を,ロボット本体の制御に介入せずに,足部に張り出す形の外付け機構(足先抑制機構,以下抑制機構)により実現する新しい手法を提案するものである.前年度では,機構設計の理論を明らかにする数理モデルを簡易的なモデルに対して得ることができ,また能動歩行器にロック型の抑制機構を導入することで歩行を安定化できる見込みを簡易実験で得た. 2年目であるH28年度は,抑制機構のパラメータの設計方法の導出と,より実際的なロック型抑制機構のハードウエア設計を目標として,以下の成果を得た. (1)抑制機構のパラメータ設計に関する成果:小型能動歩行ロボットに抑制張り出し量をモータで制御できるロック型抑制機構を取り付け,歩行の挙動を定量化するために角速度センサを重心付近に取り付け,さまざまな斜面で実験を行ったところ,歩行面の斜度と,もっとも安定化効果のある抑制機構の床面高さの間に,ほぼ線形な関係がみられることが明らかになった.さらに適切な抑制機構により補正されたロボットの姿勢は,ほぼ平面を歩く場合と同様な直立姿勢に近いものであることが分かった.ただし斜度によっては若干の後傾姿勢が最安定となる場合も見られるので,次年度に詳細を明らかにしたい.これにより斜面に適応させる設計については,姿勢をほぼ垂直に補正するような抑制量を与えればよいことが明らかになった. (2)ロック機構のハードウエアに関する成果:前年度で明らかにした能動2足歩行ロボットへのロック型抑制機構では,抑制機構の点接触位置により,抑制後の左右の揺動の増幅が起き,横方向に不安定さを増す問題点がわかっていた.今期は接触点を若干拡大させ,柔軟な素材で覆うことで左右の揺動を抑える改良を行い,実験を通して有効性が確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は能動歩行を行う2足歩行ロボットにロック型の抑制機構を設けることで歩行が安定することを簡易的に実験で確認でき,また環境に応じた抑制量の設計についても簡単な理論モデルを導出した. この成果を受けてH28年度では,昨年度の機構を改良したものを用いて能動歩行ロボットでの網羅的な実験を行い,それにより「平地の安定歩行を行う能動2足歩行ロボットを,ある斜度の斜面で歩行させた場合に,安定歩行を実現するためのロック抑制は,その斜度における両足支持期の,ロボットの鉛直方向を基準とした姿勢が,平地歩行での鉛直方向を基準とした姿勢と同じになるような量である」ということが明らかになった. 本研究は(1)ロック抑制機構のハードウエアを明らかにすること,(2)与えられた環境に対してロック抑制のハードウエアを動かす量を明らかにすること,(3)この方法が能動歩行ロボット自体の制御に干渉しないことを明らかにすること,の3つから成る. 今年度で, (2)については斜面での歩行を対象として完了することができ,(1)については,すでに前方へのロック抑制機構について前年度で明らかにしているので,研究は順調に進んでいるものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
(1) ロック抑制機構のハードウエアについて:残されている課題である後方向(矢状面),および横方向(前額面)のロック抑制機構について検討を行う.本提案の手法はロック抑制であるため軽量小型なモータで済むという利点を有するが,矢状面のハードウエアと同様なものを独立して3個足底に実現すると,足底の重量が過剰に増え歩行への影響が生じる可能性がある.そこで次年度では,1つのモータで連動して前後側面を抑制する機構を検討し具体的な形を明らかにしてゆきたい.
(2) 与えられた環境に対するロック抑制量について:斜度に適する抑制量の関係は明らかになったので,次年度では加速度センサの情報から平地安定歩行の姿勢との差を一歩ごとに求め,その差を斜度とみなし,ロック抑制量を求める方法を検証したい.
(3) ロック抑制と能動歩行ロボット自体の制御との不干渉性について:本年度までの研究で,ロック抑制による安定化とは,通常からずれた歩行姿勢を.水平面での歩行姿勢に近づけるように脚の構造を変化させるものである可能性が分かった.しかし実際の水平面とは異なり,次のサイクルでの立脚が直前の立脚より沈み込むことになるため,制御にはこれが外乱として加わる.そこで,姿勢の崩れの度合いに対する外乱としての沈み込み量の関係を明らかにして,これが十分に小さいことを示すことで,不干渉性を明らかにしてゆきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
ロック抑制機構の改良の試作を行う途中で,当初の予定から設計を一部再検討する必要が生じた.そのため当初の設計において必要とした一部の消耗品の購入を停止し,次年度に設計が確定した段階で,次年度予算と合わせて新たな設計において必要となる消耗品の購入に利用することとしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金9,284円は,次年度に申請している消耗品額10万円と合わせて,新設計の機構の作成に必要となるモータや構造部品他の消耗品の購入に充てる.加えて次年度は国内および国際会議での研究発表の旅費として40万円を予定し,雑誌投稿費と研究協力の謝金として10万円を予定していsる.
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