本研究はさまざまな制御方策で歩行制御される2足歩行ロボットに対して,ロボット本体の制御に介入せずに,その歩行安定性を改善する新たな方法を提案するものである. 具体的には,(1)足底から進行方向およびその直角方向に若干張り出す位置に,床の間に反力を伝える支持機構を用意する.(2)それぞれは,足底がある規定の角度に前屈あるいは回外した場合に床面と接触するように着地点(面)を設定し,固定する.(3)歩行が不安定となり,この機構が床面に接地する程度まで前屈あるいは回外した時点で,脚の回転は床面接地位置を新たな支点とする支点切り替えが生じ,角速度減少でブレーキ効果が得られる.これにより,ロボット内部の制御にかかわらず,倒れこみ過剰な場合に脚を受動的に引き戻す効果が得られる. この機構は,床面との接触高さのみを,歩行環境の乱雑さに応じて事前決定し,歩行前にモータにより高さを決めて,その位置にロックし,歩行動作期間中は無制御・無駆動で作動する.よって足底に装着する靴のような歩具として実現できる汎用性を有している. この研究では,(1)安定化の原理である支点切り替えによる脚の角速度減少効果を数値シミュレーションを通じて明らかにし,(2)歩行環境に応じたこの機構の床面接触高さについて,その決め方を前述のシミュレーションにより指針を示し,(3)固定シーケンスで歩行する簡易的なヒューマノイドロボットでの実機実験により,実際の設計例を明らかにした. さらに本研究では,この原理を人の靴へ応用し,靴と脚の間を弾性体で軽く拘束することで,過剰な背屈が生じた際に支点切り替えを生じさせて脚角速度を減少させて歩行安定化させる仕組みを提案し,実験により効果を確かめることができた.
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