研究課題/領域番号 |
15K05904
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
長谷 和徳 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (10357775)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / スポーツ科学 |
研究実績の概要 |
今年度においては,昨年度に引き続き,シューズと比較して,モデリングが容易な板ばね状のスポーツ義足を中心にシミュレーション技術の開発を行った.義足の部分のたわみ量と荷重との関係を薄板ばね理論によってモデル化した.身体力学モデルにおいては,筋の長さや収縮速度と発揮筋力との関係を表す筋力学モデルを導入し,ヒトの身体力学特性を表現できるようにした.シミュレーションとしては走り幅跳びの様な跳躍動作を想定しているが,昨年度までの踏切動作に加え,ランニングの半周期の動作も実現できるようにした.これらのモデルを統合して運動フォームと義足の力学特性とを同時に最適化し,運動パフォーマンスを最大化させるシミュレーションモデルの構築を行った. シミュレーションにおいては現在お走り幅跳びの世界記録を超えるような運動生成も可能となったが,発揮筋力や義足への過負荷の上限を設けると,必ずしも十分なパフォーマンスが得られない問題も明らかになった.また,シミュレーション結果より,義足の弾性特性の鉛直方向分力の特性と水平方向分力との干渉が運動パフォーマンスの向上に密接に関わっていることが示唆された. このようなシミュレーション結果を踏まえ,新たな試みとして,弾性要素を積極的に用いた,歩行用のシューズ開発についても別途取り組んだ.このシューズでは弾性特性を得るため,靴底に複数の板ばねを取り付けるものを考案し,水平方向分力と鉛直方向分力とを歩行に適した方向に干渉させるため,板ばね取り付けの向きについて実験的に検証を行った.実際の板ばね要素は炭素繊維強化プラスティック(CFRP)を用いて自作した.実験からは板ばね要素の有効性を示す結果も得られたが,左右のバランス保持力の低下など問題点も明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は想定していなかったスポーツ義足を主たるターゲットにしたが,これにより材料力学的なモデリングが容易になり,運動と道具との同時最適化という大前提のターゲットについては良い成果が得られつつある.また,その知見を生かして歩行用シューズの開発にも取り組むことができ,波及的に研究が広がりつつあると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
29年度に置いてもスポーツ義足を対象とした取り組みを行う.29年度ではこれまで得られた成果に基づき,実際に義足を作製し,障害者スポーツ選手に利用してもらい,定性的でも性能向上についての評価を得ることを目指す. また,この成果を歩行シューズなどへ応用するなど,波及的応用についても引き続き取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたが,金額としては大きくなく,基本的には計画的な利用であったと判断している.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においてはシミュレーションモデルの完成とその評価に主に助成金を用いる.また,成果報告にも積極的に活用したい.
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