今年度においては,昨年度に引き続き,シューズと比較して,モデリングが容易な板ばね状のスポーツ義足を中心にシミュレーション技術の開発を行った.前年度までは義足先端のたわみ量のみを計算していたが,義足各要素のたわみ角を求められるようにし,義足全体の変形量をより詳細に表現できるようにした.また,接触における転がり接触や摩擦などの現象のモデル化についても見直し,これにより義足変形に伴う地面との接触変更も表現できるようになり,より高精度に義足変形と力発揮の力学特性をモデル化できるようになった. このような義足と地面接触部のモデルの改善により,跳躍動作シミュレーションにおいて,地面反力は体重の10倍以下に抑えることができ,かつ跳躍距離として7メートルを超えるような試技をシミュレートすることが可能となった.跳躍距離を最大化するように義足形状を最適化していくと,形状が直線的なものに変化した.一方,水平移動速度が最大になるように,すなわちランニング動作を想定した動作を実現するようにすると,義足形状は丸みを帯びた形になった.さらに,跳躍運動フォームとして,腕ふりや遊脚の振り子的動作を強調した運動を生成することができた.このようにモデリングの対象が義足ではあるものの,運動と道具(義足)との相互作用に基づく最適化シミュレーションを実現することが可能となった. これらの最適化シミュレーションに基づき得られた義足を実際に作成し,その強度特性などの解析も行った.現時点は製作工程の問題などより,必ずしも想定された強度が得られていないが,材料となる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の材料特性の見直しなどにより高い運動特性を有する義足提案が期待できる.
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