研究課題/領域番号 |
15K05912
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
五十嵐 洋 東京電機大学, 工学部, 准教授 (20408652)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 協調 / チームワーク / アシスト / 気づかい / 熟達 / 集団技能 |
研究実績の概要 |
本研究は,複数の人間が介在する協調作業におけるチームワークに焦点をあてた,新しいアシスト手法について研究を進めてきた.そのキーワードとして,「気づかい」の定量評価手法を提案し,その応用可能性について検討している.これまで協調作業環境として,VR技術を用いた複数人により端点を把持されたプレート上においたボールをコントロールするプラットフォームを構築した.これにより,協調作業の総合的なパフォーマンスを集団技能として計測が可能となった. 本年度は,個人技能と集団技能の比率を考慮した新しい集団技能評価指標を定義し,各操作者が発する「気づかい」のバランスとの関係について実験検証を行った.この結果,発する気づかいのバラつきが,集団技能に影響を与えることが示唆された.さらに,3名以上の作業タスクへ拡張するため,「気づかい」のバランスを,個々の発する気づかいの分散値として評価可能であることを明らかにした. さらに,作業者個人の技能向上については,操作対象のダイナミクスを気づかれることなく修正するサブリミナルキャリブレーションについて,異なる形状のインタフェースにおける評価を行い,その有用性を確認している.さらに,追従誤差の挙動に注目した機械操作熟達の過程を評価する新しい指標を提唱し,その有効性を確認した. 今後,これらの個人技能を高めるアシストに加え,提案した「気づかい」に基づくチームワーク支援を組み合わせることで,新たな集団技能のアシスト手法を提唱する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題において,これまでに行ってきた研究内容は主に以下の2点に大別できる.すなわち.1)「気づかい」の定量評価とそのバランスに注目した協調作業評価,2)操作者に気づかれずに機械ダイナミクスを修正するサブリミナルキャリブレーションによる個人技能向上,である. このうち,1)の「気づかい」は,VR空間内に協調作業プラットフォームを構築済みであり,1-4名の実験協力者による作業評価が可能となっている.また,協調作業のパフォーマンスと「気づかい」のバランスに相関関係を見出している.これにより,協調作業パフォーマンスを高めるアシストを,「気づかい」にもとづいて設計することが可能となった.現在,この作業プラットフォームを拡張し,作業者が互いの力を感じられるよう,バイラテラル制御系の実装を行っている.これにより,他者の行動や意図を感じやすくなり,より厳密な意味での「気づかい」が抽出可能となると期待できる.力の相互作用の影響については,今秋に学会発表を行う予定である. 2)の個人技能の向上は,操作対象のダイナミクスを修正するため,様々な応用が可能である.これまで,1自由度のジョイスティックや自動車運転を想定したステアリング形状,さらに3次元加速度センサによるワイヤレスデバイスなどに適用し,その有効性を確認している.さらに,熟達過程における位置誤差重視・速度誤差重視の傾向をエラーアトラクタにより,評価する手法を提案した.これにより,操作者の熟達特性を考慮した新しいアシストへの展開が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,力覚フィードバックを協調作業プラットフォームへ実装し,力の相互作用を伴う協調作業での「気づかい」評価を行う.さらに,複数の単独作業モデルを導入することで,リーダーシップ特性と適応特性として「気づかい」を分割した場合について,どのような傾向が発生するか,さらに作業者間相性についてより深く追究する.また,同時に脳波計を導入し,「気づかい」と脳波の関係についても基礎的な知見を蓄積し,アシスト効率の向上を図る. また,個人技能アシストと協調作業アシストを同時に行った場合の影響について実験検証をすすめる.これにより,個人技能,集団技能の両方にコミットする新しい人間機械系研究への展開が期待できまる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で導入を検討していたダイレクトドライブモータが,円高の影響等により,予定金額を大きく上回る可能性がでたため,支出を見送った.そこで,システムを見直し,環境を再整備する必要が生じた.尚,部品選定は概ね完了しており,次年度予算にて導入する.
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次年度使用額の使用計画 |
小型ダイレクトドライブモータを購入し,システムの低コスト化を図る.
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