研究課題/領域番号 |
15K05914
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 創太 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任准教授 (20328107)
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研究分担者 |
佐藤 進 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (50005401)
河村 希典 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90312694)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロボティクス / 液晶広角中心窩センサ / バイオメカニクス / メカトロニクス / 人間機械システム / コンピュータビジョン |
研究実績の概要 |
2年目の取り組みでは,アフォーカル液晶広角中心窩光学系1次試作機の性能向上のために,液晶レンズセルの加工と組み付けの精度を向上させられるよう液晶レンズセルの構成の改良に取り組んだ.まず,広い視野を保持したまま局所的な拡大率可変領域内で像倍率を変更できる局所ズームレンズユニットの構成を2層の液晶レンズセルからなるものとした.以前に考案した局所倍率3倍を実現する物理形状モデルレンズに基づいて,新たに光学位相差特性に着目して位相差(光学遅れ)を算出し,前述の局所ズームレンズユニットに使用する液晶レンズセルに求められる性能の評価を行った.この結果,現状の液晶技術で実現出来る光学遅れの幅(レンズパワーに対応)から物理形状モデルレンズの寸法を逆算できることがわかった.また,このことは等価的にある物理形状から液晶レンズセルに必要な電極径と厚みを再計算できることを示している.ここでは,設計・評価フェーズと試作フェーズの2つの工程で研究を遂行した. 設計・評価フェーズにおいては,上述の光学遅れの幅から実現可能な物理形状モデルレンズの寸法の算出とそこからの液晶レンズセル電極径及び厚みの再計算を研究分担者の秋田大学佐藤進名誉教授とともに取り組んだ.研究分担者と打ち合わせるために国内旅費の中から研究打合わせ旅費を使用した.また,試作機の設計に関する情報収集のため海外旅費を用いて国際学会へ参加した. 試作フェーズにおいては,研究分担者である秋田大学河村希典准教授の協力の下,液晶レンズセルを作製し,慶應義塾大学の研究室内に設置したアフォーカル液晶広角中心窩光学系1次試作機を改良して,局所ズームレンズユニットの動作テストを実施した.また,国内旅費を使用して研究調査ならびに打合せを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アフォーカル液晶広角中心窩光学系1次試作機の局所ズームレンズユニット部分の改良とその動作テストは順調に進捗している.しかし,評価フェーズにおける再計算の結果,現行の液晶レンズセルの電極径と厚みでは仮定する物理形状モデルレンズの拡大率可変領域の径を半分にした場合でも2つのレンズセルの距離が240mmと離れており,2つのセルの位置合わせが非常に難しい.また将来のことを考えるとこの距離を1/60以下にしたい.安定した動作(十分なレンズパワーと応答時間)を保証する液晶レンズセル電極径・厚みには現状限りがあり,そこから実現出来る物理形状モデルレンズの各寸法サイズには必然的に実現可能な最小値が決まってくる.そこで,電極径をさらに小さくした液晶レンズセルや厚みを大きくした液晶レンズセルを開発することが求められる.前者はマイクロ加工技術の向上によりクリアできると考えており,研究代表者らは特に後者に着目している.液晶レンズセルでは厚みが増すほど液晶層内部の屈折率分布の変化にかかる応答時間が増えることが知られているが,ここに制御技術を用いることで,液晶レンズセル小型化のためのポイントである「レンズパワーの増加につながる光学遅れ幅の拡大の実現」と「屈折率変化の高速応答」の同時実現を図る必要がある. 本年度は設計・試作を実施するためのさらに詳細な知見が得られたが,注目点移動及びその応答時間の短縮手法の確立に関しては,やや遅れていると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
現状の液晶レンズセルの厚みをn倍にした液晶レンズセルを試作し,制御技術を用いて駆動させることにより,光学遅れ幅の拡大(n倍のレンズパワー)と高速応答を同時に実現させる.この液晶レンズセルを局所ズームレンズユニットに使用し,2つの液晶レンズセル間の距離を1/nにする.また,この屈折率分布高速応答技術を応用して多電極構造による高速注目点移動を実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年6月に研究成果の発表のため航空運賃の高額な欧米(エジンバラ・スコットランド)での国際学会に研究協力者である大学院生を伴って出張する.その費用確保のため,本年度後半費用の節約を行ったことにより次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年6月にエジンバラ・スコットランドでの国際学会に研究協力者である大学院生を伴って出張し,そのために使用する計画である.
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