研究課題/領域番号 |
15K05918
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
原田 孝 近畿大学, 理工学部, 教授 (80434851)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知能機械 / パラレルメカニズム / 冗長ロボット / 機構解析 / 機械設計 / 最適化 |
研究実績の概要 |
今年度は,運動学的冗長性と駆動冗長性を両立させる機構解析と制御方法の確立,および受動ネジ対偶内蔵の出力節の予備試作を研究目標とした. 本研究のパラレルロボットは,6自由度運動を行う手先部を8個のアクチュエータにて冗長駆動する.8個のアクチュエータで7自由度ロボットを駆動する駆動冗長性を有する第1サブシステムと,7自由度ロボットで6自由度ハンドを駆動する運動学的冗長性を有する第2サブシステムに分けて機構解析を行った. パラレルロボットのアクチュエータ位置と手先の位置姿勢の変位関係を与えるベクトルループ方程式と,その方程式の解である順逆運動学解を導出した.ベクトルループ方程式の微分関係を式変形しパラレルロボットのヤコビ行列を導出した.8個のアクチュエータで7自由度ロボットを駆動する第1サブシステムでは,駆動冗長性により機構内力を発生させる.機構内力によりロボット対偶部のガタを取り除き機構剛性を大きくすることができる.ヤコビ行列の零空間を数式的に導出し,目標とする機構内力を与えるアクチュエータの推力を求めることが出来るようになった.7自由度ロボットで6自由度ハンドを駆動する第2サブシステムでは,運動学的冗長性により特異姿勢回避や干渉回避を行う.ロボットの特異性の指標である可操作度とアーム間の最短距離を評価関数とする最適化計算により,ハンドの位置姿勢を固定して,7自由度ロボットの特異姿勢回避とアーム干渉回避を同時に実現する制御アルゴリズムを確立した.数値計算および数式計算ソフトウエアを作成し,各アルゴリズムの正当性を確認した. 左右ねじれ受動ネジ対偶を用いた出力節を予備試作し,別途開発したロボットに組み込んだ.予備試作では市販品の左右ねじれ多条ネジを利用したが,多角形断面形状を有する新しいネジ対偶を着想し学内でネジ部を試作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度交付申請書に記載した今年度の目標課題は,(1)運動学的冗長性と駆動冗長性を両立させる機構解析と制御方法の確立,(2)受動ネジ対偶内蔵の出力節の予備試作であり,本研究実績概要に示すように目標課題を完了させることが出来た.研究成果に関しては,日本機械学会などの学会で講演を行った.以上の状況から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はロボットの設計と試作を研究内容とし,機構解析に基づきロボットの設計と試作を行う.小型汎用ロボット相当の並進300mm,旋回角±90度,回転角360度以上の動作範囲を試作目標とし,基本的な動作確認を行うことを研究目標とする. 機構解析に基づいて2アーム6自由度パラレルロボットを設計する.研究代表者およびその研究室に所属する大学院生(研究協力者)は,過去にパラレルメカニズムの設計試作を数多く行っており,パラレルメカニズムの機械設計と制御に関する経験が豊富である.高精度部品の製作には,これまでの研究で構築してきた当研究機関周辺(東大阪市)のモノづくりネットワークを活用する.試作するロボットは,研究代表者の研究室で独自に開発してきた制御装置と接続可能であり,制御装置を構築するための研究開発の時間と費用を削減する.駆動冗長性を利用した力制御性能を評価するために研究代表者のパラレルメカニズムの力計測に関する研究において開発したセンサを出力節に組み込む.試作に不具合が生じた場合は,機構解析と設計を見直し,大学より研究代表者に定常支給される研究費を用いてメカニズムを改良する. 平成29年度はロボットの動作評価を研究内容とし,円運動試験装置と力センサを用いて,運動学的冗長性と駆動冗長性がロボットの位置決め精度と力制御精度に与える影響を評価することを研究目標とする. 運動学的冗長性と駆動冗長性を利用して,ロボットの特異性(可操作性)や機構内力を変化させると,ロボットの位置決め精度や力制御性能が変化する.平成24~26年度の科研費で導入した円運動試験装置を用いてロボットの位置決め精度を評価し,ロボット設計時に出力節に組み込んだ力センサを用いてロボットの力制御性能を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
受動ネジ対偶内臓の出力節の改良試作のための機械部品の一部が納期を要したために,次年度(平成28年度)納品としたため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,平成27年度末に部品選定済みで発注準備を終了した機械部品であり,平成28年度の早期に発注して次年度使用額を使用する予定である.
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