本研究の目的は、電気を用いずに圧縮空気や油水圧等の加圧流体のみによって駆動及び制御される3次元自己推進マニピュレータを開発することである。 目指しているマニピュレータは、狭い空間に入り込んだ際に、壁面に接触するとヘビのように壁面を押すことで推進力を発生する一方で、少し広い空間に到達した際には象の鼻のように大きな円弧を描いて屈曲できるものである。一般に普及している工業内視鏡では先端部分しか屈曲せず、また推進は後方から押し込む力のみによるため、本機構が実現すればより複雑な形状の狭隘空洞をより深く探索できることが期待される。 本研究は、曲率微分に比例した曲げ力を作用させることで、ヘビのような運動が実現できるという連続体蛇行理論が基礎となっており、先行研究において平歯車とリンク機構を用いることで、電気モータや電子回路を用いずにこの機能を実現する方法を技術検証している。具体的には、先行関節の角度を歯車により後続の関節に伝え、その回転により弁を作動させ流路を変化させることで、結果として先行関節と同じ角度になるという流体サーボの原理を応用している。平歯車を使用すると回転軸が平行でなければならないという制約を受けるために2次元運動のみしか実現していなかった。 この制約を取り払い3次元運動においても同様の機能を実現するのが本研究の主目的であり、同時に最大の課題であるが、一昨年度において歯車を用いずに柔軟な構造物を導入することで同様の機能を実現する画期的な機構を考案し、昨年度に機構を具現化するための素材、構造および製造方法について試作を行いながら検討したものの、十分な性能が得られなかったため、本年度は引き続き各部位の改良を積み重ねて当初の目標に近づける取り組みを継続した。 部分的な有効性が確認できた事項について、学会における口頭発表を行った。
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