研究課題/領域番号 |
15K05930
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
安藤 嘉則 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70242831)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気歯車 / トルクリミット値 |
研究実績の概要 |
積層可能な構造を持つ磁気歯車を製作した.まず,積層させたものを製作する前段階として1層分のみの試作機を製作し,次に多層を積層した試作機を製作し,動作の確認とトルクの伝達特性を確認した.製作においては,内側の高速ロータに用いる磁石は鉄板の両側を同極にすることにより磁束収束の効果が得られることを考慮した配置の採用を検討した.また,外側低速ロータにも磁束収束配列を用いて,強力な磁力を得る.また,渦電流による発熱の問題が起こることが想定されるので,その対策についてセンターロータやケースなどについて渦電流に配慮した材質や形状について検討した.また,各部の厚みなどについて最適値を検討した結果に基づき積層可能な構造を持つ試作機の製作を行った. 試作した新しい表面型磁気歯車の特性測定実験を行うにあたり,すでに保有している2機のトルク測定装置を用いた入力トルクと出力トルクの測定システムを構築した.この測定システムを用いて,各種の回転数や負荷など様々な条件における基本的な入出力トルクデータを測定し,さらにスリップが始まる伝達トルクの最大値を調べた.また,設計通りに速度比が得られるかについても各種条件下で確認する.このようにして得たデータを解析することで,入出力特性を求め,材質や各層の厚みなどについての条件や設計パラメータなどについての知見を得た. 新規に導入した電磁場解析用シミュレーションソフトウェアを用いた数値解析システムを用いて,表面磁気歯車の動作原理の確認や伝達トルクにおける各種特性などについて数値的な解析を行い,試作機による性能測定結果と比較し,性能の評価を行った. さらに,円筒型磁気歯車によるトルクリミット値の設計方法について実験とシミュレーションから考察し,設計方法について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿った進行をを見せており,試作機の製作やそれを用いた実験および,新しく導入した解析ソフトウェアによるシミュレーションなどはそれぞれ順調に進んでいる.これまでの結果について,国内および海外における学会で発表し,その場で専門家からの意見を聞き,それを今後の検討に有効に活かすことが可能あると考える. また,試作機におけるトルク伝達特性につて低回転数域において当初の見通しとは異なる低い性能結果が得られており,現在この原因の追及をしており,実験とシミュレーションからアプローチしているところである.まだ,この問題に関する本質的な理由を把握しておらず,磁気的や機械的にいろいろな観点から原因を検討しているところである. また,円筒型磁気歯車による伝達トルクの設定については,おおよそ設定方法に目途がついてきたが,実験で使用した以外の歯車による実証が必要であり,また,実際の応用を検討していく段階に来ていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
最大伝達トルクの測定に基づき,表面磁石型磁気歯車による多層枚数や積層する各層の設計方法による最大トルクの設計ならびに円筒型磁気歯車の配置による脱調トルクの設計などにより,各種の装置への適用を検討した場合の有用性の基となる設計手法を確立することを試みていく予定である.このさい,現在解決されていない低回転域の特性を改善する方法について重点的に検討し,所望の脱調トルクが得られるような構造を実現できるように検討を進める. 一方,伝達トルクのむらや加速時・減速時の出力軸の目標への追従の様子などの測定実験を通して,数値解析による結果と比較しながら,動的なトルク伝達特性などの基本性能を確認する.トルクむらが多い場合は,積層時に各層の配置を少しずつずらすなどの工夫により,滑らかな伝達を目指す.あわせて,性能の改良につながる項目の検討に努める.最大伝達トルクと磁石の配置などの要因を条件とした実験を行い,最大トルク設計のための手法の獲得を目指す. シミュレーションにより得られる特性値と試作によるトルク測定結果を比較し,積層による効果について検討を行い,トルクリミット値などについて導入するシステムを用いたシミュレーションによる設計を可能とする方法について検討する. 円筒型磁気歯車については,応用の観点から適用対象を絞った検討を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,2015年11月に仙台市で開催された学術講演会に参加し研究発表する予定であったが,これを行わなかったためその旅費および参加費用が未執行で終わった.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,国内2回の学術講演会での研究発表を予定しており,帯同学生の費用と合わせて旅費参加費を支出する予定である.
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