本研究では,主に以下のふたつの観点から非接触伝達機構である磁気歯車について開発を行った.まず,従来提案していた積層式高調波歯車に対して,磁石のハルバッハ配列を採用した新しい積層構造を提案した.また,円筒型磁気歯車の間にコイルを差し込むことで最大伝達トルクを調節する手法を提案した.それぞれにおいて積層数の調整やコイルの選択を行うことにより伝達トルクの調整が可能な伝達機構の構成を行った. まず新しいハルバッハ配列を有する構造を持つ積層式高調波磁気歯車を提案した.提案した積層型磁気歯車では,積層数の変更で最大伝達トルクの調節を可能にする構造ながら最大伝達トルクの値を従来の7.5倍へ向上させることが実現でき,さらにトルク密度も5.7倍の向上も達成できた.今回提案する構造を用いれば,積層数を調節することで望む脱調トルクを段階的ではあるが実現することが可能となる. また,円筒型磁気歯車における脱調トルクの調節では,挿し込むコイルの変更で脱調トルクの調整が可能であることが示され,さらに電流の印加でよりきめ細かい調節が可能であることが期待できる成果を得た.また,FPCの使用により磁石間距離を短くすることが可能となり,より大きな脱調トルクにおいてもその調整が可能と思われる. 以上より,脱調トルクの大きさの調節が可能な非接触伝達機構である磁気歯車の開発について,基本的な結果を得ることができた.今後はさらなる性能向上のための条件に関しての検討が必要である.
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