研究課題/領域番号 |
15K05932
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
前山 光明 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00196875)
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研究分担者 |
稲田 優貴 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (00735532)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 球雷状放電 / 水処理 / ヒドロキシラジカル / 溶質の過渡変化 / 光学測定 / ヒドロキシラジカルの2次元分布測定 |
研究実績の概要 |
本放電を用いた分解処理では、極性効果や、処理速度が処理途中で変化し、これが放電による溶液の状態の改質の2次効果である可能性が高いことが平成27年度の結果から想定され、溶液の導電率や溶存酸素量などの溶液の状態の測定装置、およびこれを変化させる装置を組み入れ、水処理への有効な因子を探った。その結果、他の水処理において大きな影響を与える溶存酸素量、および導電性、pH などの変化は、本水処理中での変化が認められなかったが、溶存オゾン濃度は、負極性ではその変化は小さいが、正極性では 5mg/L という高濃度に増加し、これが正極性において処理速度が処理回数と伴に増加することを見出した。特に、正極性の場合は、球雷電極放電によるヒドロキシラジカルによる水分解より、電気分解に伴うオゾンによる水処理効果が大きいことが判明した。
一方、「(2)分光測定による生成された大気圧プラズマ中の励起種の同定と励起種の二次元分布測定」については、紫外線領域の測定装置の見直し、および、直接紫外線領域に測定感度を持つICCDカメラを用いて測定を行った。その結果、テレフタル酸を用いた光プローブ法による方法、および、ヒドロキシラジカルの発光波長であるλ=310nm の狭帯域フィルタを用いる2種類の方法で球雷発生時、成長時の2次元の発光分布計測に成功した。また、電極材料として、これまでの銅以外に、モリブデン、黒鉛、鉄を用い、発光スペクトル、それより励起電子温度、電子密度とその時間変化等、球雷で生成されるプラズマの基礎的パラメータの関係を定量的に測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度で計画した項目の内、(4) 27年度に未完了の「光プローブ法によるヒドロキシラジカルの 2 次元分布の測定」および、「水処理への有効な因子を探る」については、概要の通り所定の結果を得た。 未実施である(1)増強された電源を用いたより長時間放電による水処理効果の確認、(2)高速な繰り返しによる処理速度向上の確認、(3)水処理溶液の状態を実時間測定を行い水処理速度との関係を明らかにする、については、平成27年度に購入した大容量コンデンサの充電回路の作成に時間がかかったためであり、平成29年7月には関連した実験を開始する計画である。 また、(5) 質量分析計によるインジゴカルミンの分解経路の確認および他の難分解物質の分解処理性能の測定 については、本学の化学分析センターにて分析を依頼したが、分析方法か分析試料の設定に問題があるのか、分析前及び分解後の物質についても観測不能のため、想定した結果が得られなかった。文献等では分析可能なので、他の分析方法を用いるか、他の分析期間に依頼するなど検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にあり、まだ未実施の(1)増強された電源を用いた長時間放電による水処理効果の確認、(2)高速な繰り返しによる処理速度向上の確認、(3)水処理溶液の状態を実時間測定を行い水処理速度との関係を明らかにする。特に、溶液の化学、物理的パラメータも同時に実時間測定を行うことで分解過程における放電により発生する化学活性種ヒドロキシラジカルか、オゾンによる効果を区別することでより正確な分解性能を評価する。
また、これまでの研究で、(a) 処理溶液の表面張力の制御、(b) 生成されるヒドロキシラジカルと処理溶液の反応の促進方法の改良 が、本処理性能を高めるには重要であることが判明した。これらを踏まえて、ジェット水流による安定化の条件を総合的に検討して、水処理用プラズマ源を作成し、実際に現在課題となっている難分解物である染料や1,4-ジオキサンなどのテスト排液を利用した水処理実験を行い、水処理に適したプラズマ源を実現するための装置の諸量を明らかにするとともに、性能の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
水処理のより詳細な効果を調べるための化学分析手法について、所属大学の分析センターで所定分解物質の分析が出来ないことから化学分析の費用が未使用になった。 この他、電源強化の計画の遅れ、および国内で開催された国際会議での発表としたため出張費の未使用額が増えた。
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次年度使用額の使用計画 |
化学分析を学外の機関への依頼と、紫外線領域の吸光度法を用いた手法による水処理分解効果の測定装置、および、溶液の表面張力低下による測定の再現性の向上のための機器を購入する。
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