研究実績の概要 |
平成29年度までの研究において、測定試料の下準備方法等が不明で測定ができないでいたインジゴカルミン水処理溶液のLCMSによる質量分析は、水分を蒸発させメタノールを溶媒とし、ネガティブモードとすることで測定できるようになった。インジゴカルミンのピークm/z=210 の検出強度が水処理に伴って減少し、また、この減少に伴い分解生成される物質のm/zの種類およびその時間経過を両極性ともに確認した .これより濃度計に用いた光学的手法に加え,化学的手法でも球雷によるインジゴカルミンの分解を確認できた. また負極性/正極性により処理速度、さらに、時間経過による処理性能の変化の原因を、質量分析、光学測定、電気的な入力エネルギー測定、および溶液の熱、pH,溶存オゾン濃度などの物理的・化学的な性質の変化などの測定結果を総合的に検討を行った。その結果、負極性では、初期は球雷で発生する活性種によりインジゴカルミンが効果的に分解されるが、その後、分解生成物質、例えばm/z = 226 の物質など、の濃度が高くなりインジゴカルミンよりこれら分解生成物の処理に活性種が使われることでインジゴカルミンの処理速度が低下したように観測され、また、正極性の場合には、生成およびそれにより分解されるのはオゾンのためであり、これは分解生成物の分解には寄与しないので、結果として処理後半において正極性の処理速度が大きくなるように観測されたものである。以上から、負極性においてはOHラジカルにより、正極性では溶存オゾンにより分解反応が起こり、特に負極性の場合は、分解生成物もOHラジカルによりさらに分解されることを実験的に見出した。さらに、OHラジカルによる分解の性能の評価に利用される酢酸の分解を行い、放電の状態が導電率の違いにより大きく変化し、また、正極性、負極性どちらでも分解が進むことを確認した。
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