研究課題/領域番号 |
15K05933
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
早乙女 英夫 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50261938)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DC-DCコンバータ / 磁気デバイス |
研究実績の概要 |
前年度に開発した高電圧・髙dv/dt性能を有する高精度方形波電圧発生装置を適用して高周波磁性材料であるフェライトで作成されたトロイダルコアを励磁し,フェライトの動的磁気損失を測定した。 まず,フェライトの動的磁気損失の温度特性を確認した。前年度は,0℃および常温での動的磁気損失に大きな差異がみなれないことを論文化したが,今年度は70℃までコアの温度管理を行い,動的磁気損失の温度特性を測定した。その結果,概ね30℃より高温の領域において,同電圧時間積条件での動的磁気損失が減少する傾向であることを見出した。また,この特性は,直流ヒステリシス損失の温度特性とは異なることも分かった。以上の知見から動的磁気損失は,同じ磁気損失である直流ヒステリシス損失とは異なる発生メカニズムを持つことが類推され,この内容を論文化して投稿し,査読の結果,掲載される旨,通知があった。 次に,フェライトの高周波励磁における動的磁気損失の測定結果からフェライトインダクタの等価回路によるモデリングを試みた。ここでは,インダクタ,直流ヒステリシス損失を消費する抵抗および動的磁気損失を消費する抵抗の3並列非線形回路を想定した。当初,動的磁気損失を消費する抵抗と比例関係にある動的磁気損失パラメータの同定ができなかったが,非線形インダクタのモデリングを改善したことにより,動的磁気損失パラメータの同定が行えるようになった。 また,電流共振型DC-DCコンバータを基本トポロジーとする10倍程度の電圧比がある双方向コンバータを製作し,その性能を実験およびシミュレーションにより検証した。ここでは,マイコンを適用して受電側スイッチング素子のスイッチングを行い,伝送電力の拡大を図った。しかしながら,この回路トポロジーでは低圧側の電流による損失が極めて大きくなることが分かり,この課題を解決した新しい回路トポロジーを考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェライトの高周波損失の解明は,高効率コンバータ開発おいて大きな課題であり,動的磁気損失の温度特性および動的磁気損失を考慮した磁気デバイスの等価回路化の糸口が見えてきた。 双方向給電可能なDC-DCコンバータの開発にあたり,その課題を実験およびシミュレーションによって明らかにできた。その結果,新しい回路トポロジーが考案できた。
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今後の研究の推進方策 |
フェライトコアの高周波非線形モデルを完成させ,パワーエレクトロニクスの回路シミュレータ解析の損失精度向上に貢献する。 低圧側電流による損失を低減させることができる双方向DC-DCコンバータを開発する。
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