研究課題/領域番号 |
15K05939
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三浦 友史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90354646)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | モジュラーマルチレベルマトリックスコンバータ / 階層制御 / MMC / 事故時運転継続性能 |
研究実績の概要 |
本研究では,風力発電,電動機駆動などに適用が期待されるモジュラーマルチレベルマトリックスコンバータ(MMMxC)に階層構造をもつ制御系を適用し,制御装置の簡素化および改造の容易化を図る.周波数変換(交流/交流変換)を行うMMMxCは,単相ブリッジで構成されるセルを直列に接続することによって高圧化・大容量化が容易であるが,セル数の増加に伴い計算負荷や信号線の数が増大する欠点があった.そこで,制御系をコンバータ全体・アーム・セルに分かれた階層構造にし,階層ごとに複数の計算機で分散制御することで,各計算機負荷を軽減し階層間の信号数を低減する.平成27年度は,階層構造をとることによって発生する通信等の遅延が制御・電流電圧波形に与える影響を定量的に評価し,通信方式を含む階層構造をもつ制御系の設計を行った.また制御基板等の製作および組み合わせ試験を行い,7レベルのMMMxCのアーム・セル制御における基本的な動作を確認した. 次に,制御が階層構造に適している空間電圧ベクトル変調法をMMMxCに適用することによって,事故・故障に対しても柔軟に対応し運転継続性能を向上する.平成27年度においては,単相ブリッジセルが故障した場合においても故障したセルを短絡し,同じアームの他セルの直流キャパシタ電圧を増加させることにより,9本の全アームで運転を継続できる制御手法を提案し,それが階層構造をもつ制御系により容易に実現できることをシミュレーションによって示した. さらに定常時および瞬時電圧低下時においてもアーム間に過電流が発生しない制御を新たに付加して,その効果をシミュレーションによって確認した. これらの研究成果は,IEEEのEPE'15,IECON2015や,電気学会全国大会・産業応用部門大会・半導体電力変換研究会,パワーエレクトロニクス学会研究会などでそれぞれ発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,7レベルのモジュラーマルチレベルマトリックスコンバータ(MMMxC)の試験装置の製作をハードウェア,ソフトウェアともに鋭意進めている状況である. 平成27年度は,7レベルのMMMxCの試験装置の構築を目的として,通信方式を含めた階層構造をもつ制御系の設計・仕様の決定を行った.さらに,7レベルのMMMxCには1アームあたり3個,全体で27個の単相ブリッジセルを必要とするが,そのすべての制御基板を製作し,1アーム分について,DSP,FPGA,マイクロコントローラなどの各階層の制御装置およびCAN方式による通信装置の組み合わせ試験を行い,その基本的な動作の確認を行った.また通信による遅延が制御に大きな影響を与えない程度に十分小さいことを確認しており,制御系のハードウェアは問題なく構築できる状態にある.また,主回路についてもすでに基板等は製作済みで,現在,部品の実装を進めている. 一方,各コントローラに実装する制御プログラムについては,5レベルで既に動作しているプログラムをもとに,7レベルMMMxCに対応した階層構造に合わせた改造を進めている.また,電力制御のための基本的な空間電圧ベクトル変調法だけでなく,平成27年度に提案しシミュレーションで効果を確認した,単相ブリッジセル故障時にも使用するアームの本数を減らさずに9本のアームで運転を継続できる制御手法についても実装を進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
7レベルのモジュラーマルチレベルマトリックスコンバータ(MMMxC)の製作を鋭意進め,これまでに検討した制御法についてその妥当性・効果を確かめる. すなわち,1) 階層構造をもつ制御系を適用した7レベルMMMxCによる基本的な周波数変換・電力変換動作の確認,2) 単相ブリッジセル故障時における運転継続を可能とする制御の実証,3) 瞬時電圧低下時の運転の実証,をシミュレーションおよび試験装置によって行う.またさらに,4) 零相電圧抑制制御とキャパシタ電圧平衡制御を適切に両立する制御の検討・実証,5) 電圧・電流不平衡時の運転の検討,6) アームが一本あるいは複数本故障した場合の運転手法についての検討・実証,を行い,MMMxCの特長を示し,大容量周波数変換器への適用の可能性を示す予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,階層構造をもつ制御系の設計を行った.当初,DSP,FPGAを用いて構成する予定であったが,通信等による遅延時間の制御・電圧電流波形への影響を定量的に評価した結果,アーム制御,セル制御のための計算機は安価なマイクロコントローラで十分であることが明らかになったため,マイクロコントローラを用いた制御系の設計をあらためて行った.本設計のため,当初の計画よりも低価格で制御系を構成できた.しかし,それに伴い,主回路の製作が若干遅れたために次年度の使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,すでにアームとセルの制御系,通信系については購入・製作を終えているので,主回路の製作およびコンバータ全体のための制御系の製作を鋭意進める予定である.したがって,それらに関わる部品等の購入により繰り越した予算を使用する予定である.
|