本研究では,可変速風力発電,電動機駆動などに適用が期待されるモジュラーマルチレベルマトリックスコンバータ(MMMxC)に階層構造をもつ制御系を適用し,(1)制御装置の簡素化および改造の容易化,(2)回路故障時の制御の容易化,を図ることを目的としている.直接交流/交流変換を行うMMMxCは,単相ブリッジセルを直列に複数接続して9本のアームを構成することによって高圧化・大容量化をしているが,セル数の増加に伴い計算負荷や信号線数が増大する課題があった.そこで制御系をコンバータ全体,各アーム,各セルに分かれた階層構造にし,計算機で分散制御することで各計算機の負荷を軽減し,階層間でやりとりする信号数を低減している. これまでに階層型制御系を適用した,各アーム3セルを直列接続した7レベル3 kVAのMMMxCを製作し,電源と系統を連系して定格電力における電力制御運転を実証した.制御法においても,9本のアームのうち5本を導通させる従来の手法ではなく,9本すべてを導通させる手法を適用することで,極低周波から入出力が等しくなる周波数まで幅広い範囲を同一の制御手法のみで安定に運転可能であることを実証した. 平成29年度は,アーム内のセルが故障した場合でも運転を継続できる手法について検討した.故障したセルをもつアームの,他の健全なセルのキャパシタ電圧を段階的に増加させることによって,セル故障から定常運転に至る過渡期間においてもアームに過大な短絡電流を流すことなく,運転を継続できる制御手法についてシミュレーションで確認した.また,入力電圧が低下する,あるいは不平衡になった場合においても安定に運転を継続できることをあわせて確認した. これらの成果によって,MMMxCは分散電源等の高圧・大容量用途において幅広い周波数を行うことができ,信頼性の高い,有望な電力変換器であることを示すことができた.
|