研究課題/領域番号 |
15K05940
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三島 智和 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (40370019)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電力変換工学 / パワーエレクトロニクス / 高周波電力変換 / 共振形コンバータ / 誘導加熱 / 金熱処理加工 / 非接触エネルギー伝送 / 高効率化 |
研究実績の概要 |
初年度に課題として残った1)商用周波数(UFAC)から高周波(HFAC)出力を生成する電力変換回路と,2)時分割インバータのスイッチングノイズを効果的に低減する回路方式を検討した。まず、課題1)への取り組みとして、シングルステージ(1段)かつ単相UFACの昇圧機能を持つブーストフルブリッジ回路(BFB)を新たに開発した。直列共振を利用した高周波電力生成と、部分共振を利用したパワー半導体スイッチのゼロ電圧ソフトスイッチング(ZVS)を採用している。定格出力3kWかつ40kHz高周波出力の試作器にて実験を行い、電力変換効率97.1%かつ低高調波ひずみの周波数変換動作を確認した。その電力制御手段として、位相シフトパルス幅変調制御を適用しており、電源電圧センサが不要でありながら(センサレス)高周波電力制御が可能であるという優れた実用性を兼ね備えることを明らかにした。加えて、パワー半導体スイッチのZVS動作を確保しながら、加熱温度により変動する負荷共振動作近傍へ追従することができる共振周波数制御システムを考案し、シミュレーションによりその有効性を秋化にした。 次に,2)については、ゼロ電流ソフトスイッチング(ZCS)促進インダクタを付加せず、インピーダンスマッチングトランス(MT)の寄生成分を利用し、ZCSを達成しながらスイッチング周波数の逓倍周波を生成する時分割高周波インバータを新たに開発した。定格1kW-動作周波数50kHzの試作器により、100kHz高周波出力の生成とともに、85%以上の電力変換効率を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加熱負荷として金属ボルトを実際に使用し、高周波焼き入れ実験装置として提案回路を実証評価したことの意義は大きい。パワー半導体スイッチのZVS動作への拡張と、負荷共振タンク回路の検討も、BFB回路および改良形時分割高周波インバータで実施されている。加熱温度に依存した負荷インピーダンス変動に伴う共振周波数制御について,シミュレーションによりその有効性を確認している。今後,実験試作器の制御系を構築し、実証評価する予定である。 28年度の研究成果について、査読付英文論文(IF付)1編、国際会議論文1編、国内学会発表3編の発表を実施した。 以上の成果および実績からを総合的に判断し、また28年度の研究計画と照らし合わせても整合性があることから、概ね順調な進展状態と総合的に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終となる29年度は、前年度の成果と課題を踏まえ、1)共振周波数追従制御を組み入れた高周波BFBコンバータの実験評価、2)時分割高周波インバータの高出力化および電磁ノイズ定量評価,さらに3)炭化ケイ素(SiC)パワーMOSFETを適用した高周波BFBコンバータとIGBTを適用した時分割高周波インバータの特性比較を行う。 まず1)においては、高周波誘導加熱負荷の電圧・電流を検出し、その位相差角PLLに基づきZVSを実現する動作周波数追従制御と、それらから演算された高周波電力の指令値追従による位相シフトパルス幅変調制御をと併用した、ディジタルコントローラにより実機評価する。次に2)については、3相以上の多相多重化を図り、電力容量をアップすると同時に高周波化を狙う。さらに,3)では、高コストながら高速なSiCパワーMOSFETによる高周波IH用コンバータと、多相構造ながら低コストな時分割IGBT高周波インバータを性能比較し、実用性を観点に入れた相互比較を行う。 これら結果を踏まえた上で、3カ年の研究成果を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の進捗の都合上、当該年度(28年度)での検証よりも次年度(29年度)での検証が相応しい項目があった(制御システムの構築とその実機検証)。このため、関連実験用消耗品を購入するための費用を次年度へ繰り越しすることが適切と判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
年度の検証項目として、提案装置の制御系システムの構築を挙げており、そのための費用として繰り越し額を充当する予定である。
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