本研究では,電力システムにおける広域観測情報を利用することで,不確定状況下においても特性の異なる電源が安定性に与える影響度を定量的に評価する方法と,信頼性向上のための制御方法を探究し,その有用性を明らかにすることを目的とした。 最終年度においては,電力システムモデルから算出される固有ベクトルと電圧位相や電流の感度評価から算出される指標を用いて支配的な電力動揺モードの特性を評価し,その評価に基づいて支配モードを安定化するための制御方式を検討した。感度評価に基づく指標が制御器の動揺抑制効果と高い相関があることがわかり,系統安定化装置に対する入力信号の選定に有用であることがわかった。電力系統シミュレーションを用いて検証した結果,系統故障を想定した大きな外乱に対して動揺抑制効果を有することが確認できた。 本研究を通じて得られた成果として,1. 位相差情報,太陽光発電の導入量,日射量といった情報から,特に相対的に同期発電機による発電が減小する低需要期の昼間時間帯においてシステム全体の慣性が低下する傾向を捉えることができ,観測情報からその影響度を評価できることがわかった。2. 感度評価に基づいて電力動揺モードの特性を把握するとともに,その結果に基づいて支配モードを安定化するための制御方式を提案し,その有効性を示すことができた。3. 系統連系装置に仮想的な慣性を持たせる方式による系統制御方式を提案し,システムの慣性力を向上させることで周波数変動抑制効果を示すことができた。これらの結果は,従来の回転機を用いた電源とは異なる特性をもつ電源の増加により低下する同期状態を保ちもとの状態に戻ろうとする能力について,観測に基づいて評価した上で系統制御により改善を行う方法であり,信頼性の向上に寄与できる。
|