本研究は,モータ駆動装置の小型化のため,交流電動機の速度を検出するためのエンコーダを省いたエンコーダレス制御について,各種運転領域で安定に動作し,トルクの瞬時制御が可能な高性能特性をできる限り簡単なアルゴリズムで実現する制御法を開発し,安定解析,シミュレーション解析および実験により検証することを目的としている。 誘導電動機のエンコーダレス制御に関しては,これまでの方式に比べて簡単なアルゴリズムで実現できる方式を考案した。最終年度には,一次抵抗が変動した場合の安定解析を行い,その影響を理論的に検討した。この結果,一次抵抗の変動が大きい場合に不安定になることが明らかになったので,その対策として一次抵抗のオンライン推定法を考案した。一次抵抗推定のシミュレーション解析と実験により,一次抵抗の影響が大きくなる低速運転時に安定に推定が行えることを確認した。 3レベルインバータに関しては,コンデンサの中性点電圧を一定にする制御法を開発し,誘導電動機のベクトル制御を行った場合について,シミュレーションと実験で動作を検証した。最終年度に3レベルインバータ駆動による誘導電動機のエンコーダレス制御を実現することができた。 同期電動機のエンコーダレス制御に関しても,誘導電動機の場合と統一した考え方により,これまでのオブザーバ方式より簡単な方式を考案し,安定解析,シミュレーション解析及び実験による検証を行った。最終年度には,電流制御器と速度制御器について検討を加え,電流制御は比例制御,速度制御は積分制御のみで良好な運転が行えることを理論と実験で明らかにした。
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