研究課題/領域番号 |
15K05954
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉田 孝博 東京理科大学, 工学部第二部, 講師 (10385544)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 静電気放電 / ESD保護素子 / システムレベルESD |
研究実績の概要 |
本研究は,電子機器の開発段階で必要となる静電気放電(ESD)耐性の評価・改善において設計期間短縮,試作コスト削減につながるシミュレーション技術としてこれまで申請者らが研究を行ってきた,ESDが機器に加わった際に機器内部の半導体デバイスが受ける電気的ストレスをシステムレベルで算出する連成解析手法において,この提案手法の実用化の課題であったESD印加時の半導体デバイス内のESD保護回路の動的応答特性のモデリング手法を開発する研究である. 平成27年度は,交付申請書の研究実施計画の項目に従い,ESD保護素子のESD印加時の動的応答特性のモデリング手法の確立に向けた研究を行った.この研究では,単体のESD保護素子(TVSダイオード)に対して,ソースメジャーユニットで,保護回路が動作する際のブレークダウン電圧およびその際の電流値を計測すると共に,パルス電圧源を用いてTVSにパルス電圧を印加し,差動プローブとグラウンドラインに挿入した電流プローブ,オシロスコープで電圧波形と電流波形を計測することで,ESD動的応答特性の一つとなりうるTVSダイオードの初期過渡応答の時定数τを抽出した. さらに,上記の平成27年度実施計画の研究を遂行するにあたり,交付申請書の平成28年度研究実施計画の研究結果も相互に考慮,反映しつつ行う必要が生じたため,平成28年度の,ESD保護回路が動作状態になった後の「保護回路のインピーダンス」の計測方法の確立に向けた研究も先んじて行った.この研究では,ベクトルネットワークアナライザ(VNA)とバイアスティ,直流電源を組み合わせてTVSの動作状態と非動作状態の周波数特性をSパラメータとして計測することで応答特性を抽出し,ESDストレスのシステムレベルでの連成解析にこの応答特性を反映させるモデリング手法・構成を考案し,精度の検証を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時に掲げた平成27年度の研究実施計画の項目について,ESD動的応答特性のパラメータ算出法の検討は,新たなパラメータを得ることに成功し,ほぼ計画通りに進行したが,算出されたパラメータの有効性の評価,ならびにこのパラメータの連成解析への反映方法については検討が不十分なため,引き続き平成28年度も研究を行う必要がある. また,先んじて検討を始めた,平成28年度前期の実施計画である,ESD保護回路が動作状態になった後の「保護回路のインピーダンス」の計測方法の確立については,計画通りの方法で計測可能であることを確認したが,さらに,ESD保護回路の応答特性を反映させるモデリング手法ならびにシミュレーション構成までも考案し,精度の検証まで行い,計画よりも進展している.この成果は,静電気学会春期講演会において発表した. 以上の状況により,現時点ではおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,ESD保護回路が動作状態になった後の「保護回路のインピーダンス」の計測方法の確立は完了したので,平成27年度に考案した,ESD保護回路の応答特性を反映させるモデリング手法ならびにシミュレーション構成に関して,精度改善のためにシミュレーション構成の改良やシミュレーション条件設定の模索を行うと共に,比較対象となる実測データの再計測も交えて,シミュレーション精度をより適切に評価する. また,平成27年度に抽出成功したESD動的応答特性の新たなパラメータであるTVSダイオードの初期過渡応答の時定数τについて,前述のシミュレーション構成に対する反映方法・構成も並行して検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表のための国内出張旅費として計上した予算に対して,発表先の学会開催地が近郊であり,旅費が低額であったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,平成28年度の成果発表出張旅費を補う目的や,実験遂行に必要となる材料費の充実を図る目的で,平成28年度の研究費と併せて使用する.
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