研究実績の概要 |
2030年までに太陽光発電を5300万kW導入することが日本の国家目標となっており,今後,多数のビルの屋上に太陽光発電設備が設置されていくものと予想される。設備が高い位置にあればあるほど雷を受けやすいため,ビル屋上に設置される太陽光発電設備は雷被害をより受けやすい。しかも,太陽光発電設備の動作電圧は低く,過電圧に対して脆弱である。本研究では,本応募者がこれまでに培ってきた電磁界解析技術,大気電気学分野の雷に関する知識,電力工学分野の設備絶縁に関する知識,環境電磁工学分野の電磁遮へい等に関する知識を活用して,種々のモデルを開発し,それらを用いて雷撃を受けたビル屋上の太陽光発電設備に生じる過電圧について検討を行い,得られた結果に基づき太陽光発電設備の耐雷対策技術を構築することを目的としている。 平成27年度は,ビル屋上に設置されている太陽光発電設備が雷撃を直接あるいは間接的に受けた場合のシミュレーションを,電磁界の時間領域有限差分法(FDTD法)を用いて行うために必要な下記のモデル開発を行い,開発したモデルの妥当性および精度を対応する実測結果等との比較により実証した。 (1) FDTD法による細線導体ワイヤの高精度モデル, (2) FDTD解析で使用可能なコロナ放電の工学モデル, (3) FDTD解析用吸収境界モデルの高安定化, (4) 電気設備で発生する部分放電検出法, (5) 誘導電圧計算モデル, (6) 雷電磁界パルス伝搬モデル 以上の研究成果は,米国電気電子学会(IEEE),米国地球物理学会(AGU),電気学会等の12件の雑誌論文として投稿され,2015年度内に掲載されている。
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