研究課題/領域番号 |
15K05962
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
井上 馨 同志社大学, 理工学部, 教授 (60343662)
|
研究分担者 |
加藤 利次 同志社大学, 理工学部, 教授 (40148375)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | N-Tマップ / 最適軌道 / 駆動条件 / 省エネルギー |
研究実績の概要 |
本年度の研究の目的は,電動車両(電気自動車,鉄道,無人搬送車,などのモータを用いて走行する車両)の自動走行もしくは走行アシストにおいて,各種の駆動条件(時間,速度,移動距離,など)を満足しつつ,省エネルギーかつ運搬物や乗員に過度なジャーク(速度の二階微分)がかからない最適な軌道(速度,移動距離,モータトルク,などの時間波形)を求めることにある。 まず,電動車両の駆動系を模擬した電動機駆動システムを構成し,その損失解析を行い実験によるN-Tマップを作成した。ここではよく用いられている誘導電動機や磁石埋込型永久磁石電動機を対象として,モータ駆動用インバータ,トルクメーター,負荷となるヒステリシスブレーキとフライホイール,回転速度と位相を検出するロータリーエンコーダを適切に配置した駆動システムを設計・制作した。また制御に用いるための各種情報を取得するためのセンサ類を適宜配置し,損失を計測するための電力量計やディジタルオシロスコープなどの測定系を連係させ,これらを既存のdSPACE社製計測制御装置を用いて駆動制御を行う実験装置を構築した。 次に,N-Tマップから駆動時の損失を低減する最適軌道を導出する方法を検討した。実験から得られるN-Tマップを用いる前に,従来の変分法を用いた解析的手法の結果と比較して検討するため,解析式から計算して求めた理論N-Tマップを作成し,これから最適な回転速度とトルクの軌道を導出する方法を検討した。N-Tマップのデータは,離散的なデータであるため,適切な補間をかけつつ最適化を行う。最適化の方法としては,評価関数を設定してこれを最小化する数値的な手法であるLMI(線形行列不等式)を用いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた実験計測システムの構築ができ,駆動条件を満たしつつ駆動中のエネルギー損失を低減する最適軌道を数値的に導出し,その有効性の検証ができている。特に最適軌道の設計においては,次年度検討予定であった乗り心地の指標となるジャークを直接に考慮した軌道の一つの導出法についても検討を行い,その有効性を検証している。しかしながら,実験計測システムにおいて車体等の慣性力を模擬するフライホイールの導入についてはこれからであるため,総合的には上記の区分の進捗と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
まず平成28年度に行う予定であった実験計測システムにおいて,車体等の慣性力を模擬するフライホイールの導入に向けた設計・調整を行う。これにより,設計した最適軌道を用いた場合の動特性を実験においても検証する。 続いて,平成27年度に一部先行して検討を開始している,乗り心地のためのジャークを考慮した最適軌道の設計を進める。ジャークを抑制するために,一般的にS字軌道とよばれている軌道が導入されている。しかしながら,S字軌道のみでは駆動条件や省エネルギー性を満足できないため,平成27年度で検討した省エネルギー軌道とS字軌道を組み合わせて,軌道同士を接続することでジャーク抑制と省エネルギー性を満足する軌道の設計を行う。接続の際に軌道の角度が異なるとジャークを生じるので,角度をそろえて接続するなどの条件を定義し,それらを満足するように評価関数を定義して数値的な最適化手法により設計を行う。またこれらに加え,実際の駆動時の制約を考慮して任意のトルクおよび回転速度の上限値を考慮した最適軌道についても検討を行い,実際に用いる際に考慮すべき事柄について検討を行い,最適軌道の汎用的な応用を目指す。
|