研究課題/領域番号 |
15K05968
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高 義礼 釧路工業高等専門学校, 電子工学科, 准教授 (80335091)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 静電気放電 / 火花チャネル / 火花抵抗則 / GHz帯域 / 火花長 |
研究実績の概要 |
平成27年度は放電電流計測システムを構築することが第一の目標であった.IEC推奨の電流測定用ターゲット,高周波ケーブル,減衰器,広帯域オシロスコープ,高電圧電源等を用意し,測定系の設計・制作をおこなった.また,放電側の電極を設計し,こちらも手作業で制作をおこなった.これら両者を組み合わせて放電電流計測システムを構築し,平成27年度後半から試験運転を重ねた.平成28年1月ころにデータ取得がおこなえ,この結果を平成27年度釧路工業高等専門学校専攻科学生特別研究発表会(平成28年2月26日,釧路プリンスホテル)で外部発表(一般公開されている研究発表会において指導学生が発表)した.当発表では,測定した火花抵抗の時間変化がRompe-Weizelの火花抵抗則に概ね合うことを示した.しかしながら,測定値のばらつきが大きいことから再度システム構成をチェックしたところ,電極固定にぐらつきがあることが明らかとなり,その改善に向けてすべての装置固定の方法を一から見直すこととした.現在はミクロン単位の固定のぐらつきを抑えるための工夫を思案中である.電極固定のぐらつきが抑えられれば,より高精度で微小ギャップ(低電圧帯電)における火花抵抗則の検証が行えることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は放電電流計測システムを構築することが当面の目標であった.このため,IEC推奨の電流測定用ターゲット,高周波ケーブル,減衰器,広帯域オシロスコープ,高電圧電源等を選定し,測定系の設計・制作をおこなった.また,放電側の電極を設計し,こちらも手作業で制作した.これら両者を組み合わせて放電電流計測システムを構築することができた.平成27年11月頃から試験運転を重ね,平成28年1月ころに放電電流波形の取得がおこなえるようになり,この結果から計算した火花抵抗の時間変化が概ねRompe-Weizelの火花抵抗則に合うことを示すことができた.この成果を受けて外部発表することができた.ここまではほぼ当初の計画通りである.しかしながら,測定値のばらつきが大きいことから再度システム構成をチェックしたところ,電極固定にミクロン単位のぐらつきがあることが明らかとなり,その改善に向けてすべての装置固定の方法を一から見直すことになった.現在はミクロン単位の固定のぐらつきを抑えるための改善を進行中である.以上のことから,当初の予定通り装置は概ね構築でき,狙い通りの実験をおこなえることがわかった.しかしながら,精度の面で若干の改良が必要であることが明らかとなった。したがって,概ね順調に進展しているものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,まず初めに測定精度の向上を目指す。平成27年度内に装置は概ね完成し,測定値のオーダーは設計通りの値となったが,装置の緩みに起因するぐらつきが確認されたため,これの改善をまずおこなう。測定精度が確保されたならば,火花抵抗の導出をおこない,これと以前から提唱されている理論(Rompe-Weizel則,Toepler則等)との比較検討をおこなう.実験は充電電圧や電極サイズ等を変えておこない,どのような条件の範囲で上記理論が当てはまるのかを詳細に調べる.また,可能であれば,新たな火花抵抗則の提唱もおこなっていきたい.なお,現在は500V以下の直流電源しかないため,kVオーダの電圧を出力できる高電圧電源を用意する予定である.十分なデータが得られれば,それらを例えば電子情報通信学会の環境電磁工学研究会や電気学会の電磁環境研究会などで報告する予定である.また申請者は現在,電気学会A部門の調査専門委員会委員を務めているので,委員会での調査議題として発表をおこなう予定である.学会発表等で様々な指摘を受けたことをもとに,実験方法の改善や追加実験をなどをおこないたい.さらには,国際会議への投稿,論文誌への投稿もおこなえるようにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
入札で購入したオシロスコープの価格が当初予定額を下回ったことや,国内出張(釧路―仙台)を悪天候でキャンセルしたことなどによる.
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次年度使用額の使用計画 |
電極充電用の高電圧電源(kVオーダ)の購入や国内等の出張旅費にあてる計画である.
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