研究実績の概要 |
高温超伝導バルク磁石は高い磁束密度を実現し、30K近傍で17.6Tもの強磁場を捕捉したとの報告がある。そのため、高温超伝導バルク磁石を利用したモータや発電機は、永久磁石を用いる既存の製品と比べて飛躍的な出力増加と高効率化、小型化を実現可能であり、将来の産業用電磁機器における低炭素・省エネルギー化に大きく寄与する。 本研究で使用した試料は直径45mm、高さ19mmのGd-Ba-Cu-Oバルク磁石(QMG, NSSMC)であり、77Kでの磁場中冷却で1.7Tの磁場を捕捉した。しかし、従来からのLCR過渡応答に従うパルス着磁では77Kで最大1T程度までしか磁束を捕捉できず、これは最大捕捉磁束密度の60%弱に過ぎない。そこでバルク磁石表面に設けたホール素子で測定した侵入磁束密度を着磁中にフィードバックすることでパルス磁場を制御した。この試料に対する磁束密度測定から、パルス着磁の際に1.7T近傍でフラックスジャンプを引き起こすことが明らかとなった。この1.7Tを少し上回る1.85Tを侵入磁束密度の目標値に設定して、パルス着磁電源の出力のフィードバック制御を行いながら着磁を試みたところ、1ms以下の時間領域でフラックスジャンプの有無が激しく変化する侵入磁場の不安定状態を生じた。その結果、高温超伝導バルク磁石の捕捉磁束密度が劇的に向上し、1度の着磁だけで静磁場着磁による最大捕捉磁束密度の96%もの捕捉磁束密度が得られた。着磁エネルギーと捕捉磁束密度の関係について調べると、様々なパルス磁場波形による着磁において、いずれも二重シグモイド関数に近似した分布が見られ、着磁エネルギーの増加に従って捕捉磁束密度は急激に増加し、最大値を経て暫減した。しかし磁場フィードバック波形制御パルス着磁ではそのようにならず、従来のパルス着磁と比べて6倍以上の着磁エネルギーを磁場として捕捉することに成功した。
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