研究課題/領域番号 |
15K05972
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岡本 昌幸 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 准教授 (70314820)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | GaNトランジスタ / MPPT(PV用) / フライバックコンバータ / 電力変換効率 / ゲート駆動回路 |
研究実績の概要 |
平成28年度は(1)200W級マイクロインバータの系統連系に関する回路シミュレーション、(2)昇圧用フライバックコンバータの試作、(3)インバータの試作、(4)高精度電力測定に関する検討、(5)共振形ゲート駆動回路の試作を行った。(1)に関しては、昨年度購入したパワーエレクトロニクス回路シミュレータにより、シミュレーションを行った。前段の昇圧回路をフライバックコンバータとし、キャパシタ電圧一定制御による簡易的な最大電力追従方式を採用したフルブリッジインバータにより、系統に力率1で逆潮流できることを確認した。(2)に関しては、電流連続モードでフライバック方式を採用することにより、約9倍の昇圧が可能であり、試作回路においては直流電圧源からの入力40Vに対し、出力電圧350V、出力電力220W、電力変換効率93%を達成した。(3)に関してはフルブリッジインバータを試作し、スイッチング周波数50kHzで交流60Hz、実効値100Vの出力が得られることを確認した。(4)に関しては電圧プローブと電流プローブのディレイを補正するスキュー装置を使用し、フライバックコンバータのメインスイッチ(GaNトランジスタ)、昇圧用トランスおよび出力側のショットキーバリアダイオードの損失を測定し、上記の電力変換効率及び損失分析を実現した。最後に(5)に関しては100V耐圧のGaNトランジスタに対し、共振形ゲート駆動回路を試作した。比較のため、従来のゲート抵抗を用いた駆動回路も合わせて試作し、評価を行った。この結果、ゲート駆動消費電力に関しては、使用したGaNトランジスタの電圧及び電流定格が比較的小さく、入力容量が小さかったため、従来の方式の方が消費電力は小さいことが確認できた。一方、スイッチングのスピードは(ゲート抵抗分を共通にした場合)共振形の方が20%程度高速になることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度の計画では、高精度電力測定と200W級マイクロインバータの試作と評価を挙げていたが、インバータの試作に関して遅れが生じている。マイクロインバータは太陽電池から得られる直流の電圧(30Vから40V)を300V以上まで昇圧する昇圧回路と直流電力を系統側の60Hz交流電力に変換するインバータから構成される。研究の進め方として、これら2つの回路動作をそれぞれ検証するため、個別に試作し評価を行うようにしている。フライバックコンバータについては昇圧用のトランスを設計する必要があるが、小型化(小さな鉄心・細い銅線を使用)と低損失化(磁気抵抗・巻線抵抗を小さくする)の相反する2つの目的を達成するため、スイッチング周波数、巻線の太さ、鉄心の材質・サイズ・形状などの検討を行い、幾つかのトランスを試作し、評価を行った。その際、巻き方により漏れインダクタンスが大きく変わり、漏れインダクタンスによる電圧サージによりGaNトランジスタが度々破損してしまった。その為、漏れインダクタンスを小さく、かつ小型化が可能な巻き方を試行錯誤により模索し、最終的な試作回路を得た。また、GaNトランジスタのスイッチングが非常に速いことから、ゲートーソース間の電圧振動が生じ、しきい値電圧を超え、誤点孤が生じたため、ダイオードクランプ回路によりオフ時の電圧を負電圧に引き込む回路方式を採用し、ゲート電圧振動による誤点孤の問題を解決した。さらに、フライバックコンバータに関しては、当初の計画通り、インターリーブ方式により損失の低減を図るべく、回路シミュレーションを行った後、回路を製作し動作確認まで終えている。次に効率の改善について検討の予定であったが、2つのトランスの結合係数が異なるためか、片方のGaNトランジスタのみで大きなサージが生じたため、再度、トランスの評価を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究は(1)インターリーブ方式によるフライバックコンバータの高効率化、(2)ゲート駆動回路を改良したフルブリッジインバータの製作、(3)実際の太陽光パネルを用いたマイクロインバータの評価、(4)GaNトランジスタの並列化による1kW級インバータの試作である。(1)に関しては現在、4個の昇圧トランスの製作を終え、効率の評価を行う段階であるため、速やかにデータ採取及び評価を終える予定である。(2)に関しては、誤点孤の対策を行ったゲート駆動回路を用いて再度フルブリッジインバータを製作し、評価を行う。そして、フライバックコンバータと接続し、キャパシタ電圧一定制御による簡易MPPTの制御性能及びマイクロインバータの動作確認を行う。(3)に関しては、(2)を4台製作した後、4枚の各太陽光パネルに接続し、交流電力への変換ができることを確認するとともに、ある太陽光パネルに部分影を作った際に最大電力を取り出すための制御法の改良を行う。最後に(4)を実施するため、GaNトランジスタを並列に接続した場合のゲート駆動に関する基礎的な実験(点孤のタイミングなど)を行い、駆動回路の方針を得る。次に、今年度購入予定の直流電源を用いて1kWの電力変換動作を検証するとともに、電力変換効率の測定を行う。
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